英企業による米ヒベット買収 巨大化するスポーツファッション市場【鈴木敏仁USリポート】
グローバルブランドとしてのナイキやアディダスなどは、JDスポーツにとってもヒベットにとっても重要な取引先となるが、両社の取引を合算することで交渉力を上げることができる。グローバル化しているブランドを取引先とする以上、自らのグローバル化は必須だ。
これは私の推測だが、すでに傘下に収めている3つの屋号もすべてヒベットの下に集約して、ヒベットを米国事業の主体とするのかもしれない。
英国企業が米国へ、米国企業が英国へと、過去たくさんの企業がお互いに進出しているが、多くが失敗している。両国は言語を共有しているが、言語が必ずしも成功を約束しないことは過去の歴史が物語っており、既存企業を買収し、その企業に十分な権限を渡して運営することは、海外での成功の近道である。
スポーツウエアは日常着になっている
アメリカのスポーツ専門店チェーンの最大手はご存知のルルレモンだ。昨年度の売上高は96億1900万ドルで、英ポンドあたり1.30ドル換算だと実はJDスポーツの後塵を拝していることになる。前者は製造小売り型(SPA)、後者は日本で言うところのセレクト型という相違はあるのだが、スポーツファッションという大きなくくりの中で見ると、JDスポーツはトップクラスの企業なのである。
またアパレル専門店というくくりで見るならば、インディテックス(ザラ)、H&M、ファーストリテーリング(ユニクロ)に次いで、ギャップを越えて3位となる。
私はナイキやアディダスといったスポーツブランドを普段着としている。スポーツファッションは運動用途に限られておらず、むしろ日常着として使われていることの方が多いだろう。
ルルレモンはもともと高級ヨガウェアが出発点だったが、顧客が街着として着ていることを発見して、ファッション性を高めたことで市場が拡大したという成功物語は有名だ。アスレジャーである。
つまりスポーツ専門店チェーンとアパレル専門店チェーンは競合しているのだ。JDスポーツのアメリカ進出はそういう視点で見る必要があると考えており、それゆえ私はヒベットの今後の動向に興味津々なのである。