「相続登記」4月に義務化、どう変わる? 「過料10万円以下」以外のデメリットは【司法書士が解説】
不動産の共有者が100人を超えるケースも
ーーほかにデメリットはありますか? 相続登記しないまま放置すると、名義人は亡くなった人の名前のまま、相続人全員で共有して、その不動産を持つ状態となります。 そしてこの状態のまま相続人が亡くなると、その共有している部分は、相続人の子どもたちに引き継がれます。この「次の世代への継承」が繰り返されると、どんどん共有者の数は増えていきます。そのうちの一人が、この不動産を売却しようと思っても、全員に連絡をとって相続登記をする必要があり、大変な作業となります。 また、もしその中に認知症の方がいたら、こうした売却等の法律行為は行えないので、成年後見人をつけない限り、この作業はストップしてしまいます。 ーー実際、たくさんの共有者がいる案件の依頼を受けたことはありますか? ある相談者は、母が亡くなって遺産を相続することになり、その中には田舎の母が暮らしていた家も含まれていました。登記を確認すると、名義は祖父のまま変更されていなかったそうです。 そこで私が調べてみると、この不動産の共有者は20人を超えていました。この方は、この家を所有したいと考えていたので、共有者一人ひとりに連絡して、その持ち分を買い取ることにしました。この事例では私がサポートしましたが、相談者の方が自分一人でやろうと思ったら、気の遠くなるような作業となってしまいます。 共有者の中には「自分が共有者になっていることなんて知らなかった」「何のこと? 私には関係ない話でしょ」などと言う人もいました。 共有者の数で言えば、私が扱った事例ではこれが最多規模ですが、100人を超える事例もあると聞いてます。 ーー家をだれが相続するか決められず、とりあえず不動産を家族の共有名義で登記することもあると思います。 二世帯住宅で、母親と子ども世帯が暮らしているような場合、2人の共有名義にすることは問題ないと思います。 ただ基本的には不動産は1人が相続し、単独の名義にしたほうがいいでしょう。特に、きょうだいでの共有は、トラブルの元ですのでお勧めはしません。 まず、その家を売却したり賃貸に出したりしたいと思った場合、共有名義で登記したきょうだいの許可が必要になります。1人でも反対したら売れません。 ただし、自分の権利(持分割合)だけを売却することはできます。こうした共有持分を、買い取ってくれる業者があります。こうなると、家の売却に反対していたきょうだいは、家を業者と共有する状態になってしまいます。