【海外トピックス】「EV」の話はほとんどなかったテスラの株主総会が意味するところ
話題はロボタクシー、オプティマス、AI
さて、株主動議の採決の後のプレゼンテーションでマスク氏がまず触れたのが、8月8日に発表すると告知しているロボタクシー、自動運転の話題でした。テスラのFSD(フルセルフドライビング)は現在バージョン12.3が提供されており、リアルワールドデータの収集を加速するためにアメリカでは30日間の無料体験がオファーされていますが、実際の走行で記録された大量の映像でAIを学習させており、その推論(inference)能力は次世代のver. 12.4で5倍、その次の12.5では10倍と指数関数的に向上していくとマスク氏は自信を示しました。その頭脳であるAIのエンジンとなる半導体チップも自社開発しており、消費電力も数百ワットに抑えるとのことです。いずれ何千万台ものテスラ車が世界に存在するようになれば、運転していない時間帯にはAWS(アマゾンウェブサービス)のようにクラウドサービスにも使えるかもしれないとも話しました。 もう一つ、マスク氏が時間を割いたのが人型ヒューマノイドのオプティマス(Optimus)です。現在カリフォルニア州フリーモント工場で2台のオプティマスが試験運用されており、来年には2000~3000台のオプティマスが工場に配備されるとのことです。人型ロボットの製造サプライチェーンは存在しないので、専用のモーターやギア、センサーやパワーエレクトロニクスを一から内製する苦労があるものの、これが人類に一人一台普及すれば、年間10億台の市場が出来て、そのうち10%をテスラが製造しても1億台。一台2万ドルとすれば年1兆ドルの利益になるとそのポテンシャルの高さを強調しました。
2万5000ドルEVの話はなし
EV事業については、昨年EVトップメーカーとして180万台を販売して2000万トンのCO2削減に貢献したことや、サイバートラックが毎週1300台の生産ペースに達したこと、世界に5万8000機あるスーパーチャージャーネットワークも、投資効率を最適化しつつ年間5億ドル投資し、他ブランド車向け充電アダプターの普及も進めることなどが紹介されましたが、特に目新しい話はありませんでした。 その後の質疑応答では、かねてより2万5000ドルカーと言われている「アフォーダブル」EVについてはその重要性に触れ、「もしモデルYが2万ドル以下なら年間500万台売れるだろう。」「その価格の車を実現するには、今5ドルの部品を3ドルにコストダウンしなければならない。テスラは1円(ペニー)単位でコストを切り詰める作業の大変さを知っている」と語りましたが、具体的なモデルの構想には触れませんでした。