悩みを抱えがちな人に、座禅をおすすめする理由とは?/塩沼亮潤大阿闍梨「くらしの塩かげん」
1300年間にわずか2人しか成し遂げた人がいない荒行「大峯千日回峰行(おおみねせんにちかいほうぎょう)」の満行者、塩沼亮潤(しおぬま・りょうじゅん)大阿闍梨(だいあじゃり)。最難関の命がけの荒行を経験し、修験道を極めた塩沼さんがいま切に感じるのは「日々の“あたりまえ”のことこそ難しい」ということ。 塩沼さんの著書『くらしの塩かげん』から、私たちの“あたりまえ”の暮らしにそっと光を灯す小さなヒントをお届けします。
悩みにフォーカスしない。
文/塩沼亮潤 皆さんは、座禅をしたことがありますか? 私は、もちろんあります(笑)。 ところで、座禅をしていて雑念が出たとき、多くの人は、警策を打つ(お坊さんに肩を棒でパーンと打たれる)シーンを思い浮かべると思います。実はあの叩くような行為、何らかの罰としてではなく、理にかなった理由があって行っていることをご存じでしょうか? 雑念が生まれるときは、たいてい姿勢であったり、おへそあたりに置く手の型が崩れていたりします。言い換えると、姿勢が悪いことが原因で、血の巡りや気の流れが詰まっている状態です。それを「流す」ために、体を刺激しているのです。 つまり、雑念に対して罰を与えるのではなく、体の巡りをよくして気持ちをリセットするお手伝いをしているのです。 日頃から悩みを抱えがちな人や、ネガティブなことばかり考えて心が沈みがちな人は、一度座禅を体験してみるのもいいかもしれません。心の中にうごめく雑念を払うつもりで、警策に打たれ、一度ご破算にしてみる。そうやって気持ちを切り替えて、“とらわれない思考”を育ててみましょう。きっと少しずつ気持ちが落ち着いていきますよ。 どうか、悩みすぎないでくださいね。
塩沼亮潤(しおぬま・りょうじゅん)
1968(昭和43)年、宮城県⽣まれ。1987年奈良県吉野の金峯山寺で出家得度。1999年「⼤峯千⽇回峰⾏(おおみねせんにちかいほうぎょう)」の満⾏をはじめ、2000年には9⽇間の断⾷・断⽔・不眠・不臥の中、御真⾔を20万遍唱える「四無⾏(しむぎょう)」を、2006年には、100日間の五穀断ち・塩断ちの前⾏の後、8000枚の護摩を焚く「⼋千枚⼤護摩供(はっせんまいだいごまく)」を満⾏。同年故郷の仙台市秋保に福聚山 慈眼寺(ふくじゅさん じげんじ)を建立。「⼼の信仰」を国内外に伝えている。簡単なようで難しい日々の「あたりまえ」の大切さを綴った著書『くらしの塩かげん』(世界文化社刊)大好評発売中。