津久井やまゆり園の事件から8年、「自分らしく生きる」知的障害者の自立生活と支える人々 #令和の人権
水戸市で大さんの生活を支えるCILいろはの稲田代表も「なかなか時間がかかるかもしれませんが、知的障害者の自立生活が増えていけば、知的障害のある人が地域で暮らすことが当たり前だと認知されていくと思います。かつての車いすに乗った障害者たちのように」という。
脳性麻痺で手足が不自由な東京大学先端科学技術研究センターの熊谷晋一郎教授の有名な言葉に「自立とは依存先を増やすこと」というものがある。 知的障害者の親にとって、自分が死んだ後、誰が我が子の生活を支えるのかという「親亡き後」問題は深刻で、それが本人の意思に関係なく、それまでの関係や生活から分断され施設に入所することを余儀なくされる大きな理由でもある。 しかし、もし、親や施設以外にも、地域に頼れる人がたくさんいたらどうだろうか。櫻原さんは語る。 「熊谷さんの言葉ですが、依存先という言葉に反発する人が出るかもしれません。そんなことはしんどい、できない、迷惑をかけられたくないって。でも、なにも誰もがガッツリと支援しよう、っていうことではないんです。例えば『この子が地域に住んでいる限り、俺はここで商売をしているから、細々とだけどずっと何十年も付き合っているよ』という範囲であれば、全然重くない。だけどそういう人がたくさんいたら、当事者を取り巻くセーフティネットは広がっていく。私たちだってそうです。自分の生活圏内に存在を肯定してくれる人がたくさん増えていけば、生きやすい社会に変わっていくと思う」 自立生活を送る知的障害者は、もしかしたら、生きづらさであふれる現代の日本社会を変えるパイオニアとなりうる存在なのかもしれない。
「#令和の人権」はYahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の一つです。日常生活におけるさまざまな場面で、人権に関するこれまでの「当たり前」が変化しつつあります。新時代にフィットする考え方・意識とは。体験談や解説を通じ、ユーザーとともに考えます。