１９日、イスラエルによる攻撃が伝えられたイラン中部イスファハンで、川沿いを散策する市民（ロイター時事）

　【カイロ、ワシントン時事】イスラエル軍が19日未明にイラン領内を攻撃したと伝えた米メディア報道から1日が経過する中、双方共に表立って攻撃があった事実は認めていない。 　「報復の連鎖」による本格的な衝突は避けたい考えとみられ、緊張緩和に向け慎重な対応に努めている。 　米ABCテレビによると、イスラエルは戦闘機を出動させ、イラン国外からミサイル3発を発射。中部イスファハン州ナタンズにある核施設の防護用の防空レーダーを標的にしたという。ただ、核施設を含め、被害は伝えられていない。 　ニューヨークを訪問中のイランのアブドラヒアン外相は19日、米NBCニュースに対し、イスラエルによる攻撃があったことを否定。「イスラエルが新たな冒険主義に出ない限り、報復しない」と述べた一方、「決定的な行動に出れば後悔させる」と警告した。 　米紙ワシントン・ポスト（電子版）は19日、バイデン米政権が各省庁に対し、攻撃に関し公式な発言を控えるよう指示したと報じた。ジャンピエール大統領報道官は同日の記者会見で「中東の報道に大きな関心があるのは分かるが、現時点でコメントは何もない」と口を閉ざした。 　ブリンケン国務長官も19日、イタリア南部カプリ島での先進7カ国（G7）外相会合閉幕後の記者会見で「報道については話さない」と強調。「米国はいかなる攻撃作戦にも関わっていない」と関与を否定し、「G7は緊張緩和と衝突回避を重視し、取り組んでいる」と説明した。 　規模や被害程度から見ても、イスラエルの攻撃は「限定的」（米メディア）だったとの見方が強まっている。イスラエル、イラン、米国の動きからは事態の沈静化を図る各国の思惑が透ける。