アジアの金融ハブ・香港、今年も“外国人駐在員にとって最も生活費の高い都市”に
企業は駐在員の声を聞きながら手当などの対応を柔軟に
調査を行ったマーサーのグローバルモビリティリーダーは報告書について「生計費の問題は、多国籍企業と従業員に大きな影響を与えている」とコメント。企業は生計費の動向やインフレ率に関する情報を調べ、駐在員たちの声に耳を傾けることが大事だと述べている。 「生計費の高騰により海外駐在員はそれぞれのライフスタイルを調整したり裁量的支出を抑えたり、あるいは基本的なニーズを満たすのに苦労することになるかもしれません。こうした課題を解消するために、企業は住宅手当や追加手当を含む報酬パッケージやその他の支援施策を提供することも考えられます。また、代替的な人材調達戦略を検討することもできます」 企業が駐在員に対して行う手当というと、生活費調整手当がまず思い浮かぶ。これは駐在先の生活費が本国より高い場合、その差額を補填するために追加手当として生活費調整手当を支給されるもので、駐在先の物価水準に応じて金額が決まる。このほかに、住宅手当、教育手当、医療保険など現地での生活をサポートする手当があるが、これらの支給額が妥当なものか、企業は駐在員の声や実際の現地の物価上昇の程度をみて、都度変更していく必要がある。さもないと、駐在員が必要以上に身銭を切ることになってしまう。
物価高が変えた駐在のあり方
駐在員への手当てなどが増えたことにより、コストを抑えるための見直しを図る企業も見られるようだ。 例えば、駐在期間の短縮がその一つ。これまでは長期的に5年以上の長いスパンで駐在させていたところ、短期的なプロジェクトベースに切り替えるといった策だ。その上、リモートでできる仕事は本国からリモートで行わせるなど、駐在員を置かない、または駐在員の数を減らす工夫をする会社も出てきているそう。 一方で、香港はビジネスのしやすさランキングで世界第3位にランクインしており、支社などを置き続けたい企業は多い。ご存知の通り、税制的に利点があるほか、香港では輸出入の手続きの煩雑さがなく、関税もかからない。輸出入でのストレスやコストが削減され、スピード感あるビジネスが期待できる。経済大国・中国への玄関口であり、他のアジア主要都市へのアクセスも抜群だ。 また金融都市としての香港だけでなく、テックハブとしての役割も大きくなっている。 2002年に開業した香港サイエンスパーク(HKSTP)は、香港最大規模のイノベーション支援機構として、日系企業を含めた1,700社以上の企業が入居している。ヘルステック、AI、ロボティックス、フィンテック、スマートシティテックなど幅広い分野のスタートアップ企業も技術研究などを行っており、資金援助や研究開発設備、コワーキングスペースを利用できる。 現地にいるからこそ享受できる魅力もある。手当が高くなっても、将来的に得られる利益がいかほどか次第だろう。
文:星谷なな /編集:岡徳之(Livit)