AI生成楽曲をボットで再生しまくる自作自演。約14億円を荒稼ぎした詐欺師が逮捕
9月4日、米ノースカロライナ州に住むマイケル・スミスは、AIで生成した数十万の楽曲を使い、合計1000万ドル(約14億円)もの印税をだまし取ったことで複数の容疑をかけられ逮捕された。 YouTube、AI訓練の楽曲使用につき大手音楽レーベルと交渉中 起訴状によると、スミスは、Apple MusicやSpotify、Amazon Musicといった主要な音楽ストリーミングサービスに数千ものボットアカウントを作り、これらのアカウントを使って自分がアップロードしたAI生成の楽曲数十万曲を、合計数十億回も再生させたとのことだ。 スミスは当初、自分が権利を所有する楽曲を各プラットフォームで不正にストリーミングさせて印税を稼ごうとしたが、特定の楽曲が突然10億回も再生されたことで、サービス側のシステムに不正を検知された。 普通ならそこで諦めるものだが、スミスは楽曲の数を限りなく増やし、再生回数を分散させることを思いついた。最初はちまちまと楽曲を作っていたようだが、スミスは2018年にAI生成の音楽を扱う企業のCEOや音楽プロモーターと協力することで、AI生成によって数十万曲を大量生産、この楽曲を複数の架空のアーティスト名と組み合わせて、ストリーミングサービスにアップロードした。 さらに膨大な数のメールアドレスを入手して各音楽ストリーミングサービスに数千個のユーザーアカウントを開設し、自宅からのアクセスがばれないよう、VPNを通して米国各地にいるように装った。このアカウントにはそれぞれ個別に自作ボットプログラムを割り当て、アップロードした楽曲をランダムに選んで自動的に再生するように仕掛けた。その結果、スミスのAI楽曲は総計数十億回の再生回数を得たという。 スミスは2017年に(おそらくメモ代わりとして)自分にあてたメールのなかに「1日66万1440回ストリーミング再生すれば、1日約3300ドル、年間120万ドルを稼げる」と記していた。スミスは2019年6月までに月間約11万ドルを稼ぎ出すようになり、さらに2019年から今年はじめまでの間にはストリーミング再生回数が40億回に達し、印税が1200万ドルに達したと自慢していたと報じられている。 ニューヨーク南部地区のダミアン・ウィリアムズ連邦検事は、スミスが通信詐欺罪、通信詐欺共謀罪、マネーロンダリング共謀罪の罪に問われるとしている。有罪判決が下れば、スミスはそれぞれの罪状ごとに最長20年の懲役刑を受ける可能性がある。 ちなみに、ストリーミングサービスでの楽曲再生回数の水増しで印税収入を増やそうとした例としては、当時まだ無名だった米国のファンクバンドVulfpeckが、Spotifyに無音のアルバム『Sleepify』を公開、ファンに寝ている間中ループ再生してもらい、その収益でツアー費用を捻出しようと企てたことがあった。このときはSpotifyもすぐに厳しい対応はとらず、Vulfpeckは2万ドル以上の収益を得てツアーを実現した。ただ、ほどなくして、この方法での収益増加策は禁止されることとなった。 Source: U.S. Department of Justice via: Ars Technica, Variety
Munenori Taniguchi