睡眠が7時間未満で高血圧のリスクが7%上昇、女性はさらに高リスク
この話を聞けば、あなたも睡眠時間を増やしたくなるかもしれない。睡眠時間が7時間を切ると、血圧の上昇につながることが、新たな研究で判明したのだ。ただし、この研究は査読済みの学術誌ではまだ発表されていないので、その点は注意してほしい。 この研究は、4月6日から8日にかけてジョージア州アトランタで開催される米国心臓病学会(ACC)の年次総会で発表される予定だ。 イランにあるテヘラン心臓センターのカヴェー・ホセイニー医学博士が主導したこの研究では、2000年1月から2023年5月までに実施された16の研究の統合解析を行った。 分析対象となったのは、調査が始まるまで高血圧症の病歴がなかった、6カ国の総計104万4035人の人々だ。対象者の追跡年数の中央値は5年間で、最短で2.4年、最長で18年間だった。 分析の結果、一晩の睡眠時間が7時間未満の人は、そうでない人と比べ追跡期間中に高血圧になる可能性が7%高いことが判明した。睡眠時間が5時間を切るケースでは、この数字は11%にまで上昇した。また、睡眠時間が7時間未満の女性では、同程度の睡眠時間の男性と比べて、さらに血圧が上がる可能性が上昇する(プラス7%)ことが判明した。 研究チームは、肥満度指数(BMI)や糖尿病の既往歴、高齢であることや喫煙歴など、他のリスクを統計的に考慮に入れた場合でも、睡眠時間と高血圧のあいだに関連性があることを確認した。とはいえ、糖尿病の既往歴や喫煙歴は、高血圧になるリスクを20%以上上昇させることがわかっている。 ただし、こうした研究は相関関係を示しているだけで、因果関係が明らかになったわけではない点には留意する必要がある。なぜなら研究チームは、分析対象となった各人の生活歴に関して、重要な詳細事項の多くを知る立場になかったからだ。
成人の場合、一晩に7~9時間の睡眠を取るのがよい
例えば、それぞれの人が調査期間中に、仕事や私生活の上でどのようなストレスにさらされていたかは把握していない。ストレスがあると、十分眠れなくなる可能性が高まると同時に、血圧が上昇するリスクも生じる。 加えて、この研究で分析した睡眠時間は、そもそも対象者の自己申告に基づいたものであり、かなり不正確な可能性がある。研究者自身が大きな枕に扮して、それぞれの対象者の睡眠を詳細に調査したなら話は別だが、そうでない以上、対象者が自身の睡眠パターンを正確に報告しているか、知る由もない。 それでも、睡眠不足と高血圧のあいだの関連性を発見したのは、この研究が初めてではない。2010年に学術誌「Chest」に掲載されたレビュー研究では、当時明らかになっていたこの2つの要素の関係をまとめている。これらの研究、さらには、睡眠不足と高血圧以外の疾患の関連性を示す研究を根拠として、心疾患に関する啓蒙を行う非営利団体の米国心臓協会(AHA)は、成人の場合、一晩に7~9時間の睡眠を取るように勧告している。 同協会が睡眠時間の上限を9時間に設定したのは、睡眠時間が長過ぎるのもまた、健康には良いとは言えないからだ。例えば、誰かから一晩に20時間寝ていると聞かされたら、「適切な睡眠時間」とはとても思えないだろう。 睡眠不足と高血圧のあいだに相関関係があるのは、それほど驚くことではない。睡眠は、それまでの消耗を回復し、活力を取り戻す時間だからだ。十分な睡眠が取れない状態で日常生活を送るのは、車を休みなしに走らせているようなものだ。 睡眠が十分に取れていない時間が続くと、体にはさまざまなダメージが蓄積し、コルチゾールなどのホルモン分泌の調節が難しくなる。その結果、血圧に影響が出るおそれがある。そして、高血圧は心臓病や卒中など、多様な疾患につながりかねない。したがって、血圧を適正なレベルに管理するのは大事なことだ。 というわけで、この研究結果についてよく検討し、自分が1日7時間以上の睡眠を確保できない要因は何だろうか?と考えてみるのはおすすめだ。例えば、寝室の環境は、十分な睡眠を取るのに適しているか、検証してみよう。部屋の温度を調整し、天井にミラーボールがあるならそれを撤去し、隣人がロックミュージックを毎晩2時から8時までかけているのなら、やめてもらえないかと頼むべきだろう。
Bruce Y. Lee