高齢化が進むJリーグファン 2ステージ制は起爆剤となるか
そうした役目も終わったと判断された結果として、2005年シーズンからヨーロッパをはじめとする海外に倣って1シーズン制が導入された経緯がある。横浜マリノス(現横浜F・マリノス)の主軸として黎明期のJリーグで2ステージ制を経験している解説者の水沼貴史氏は、「チーム数を含めて、私たちがプレーした頃とはまた違った楽しみ方がある」と今シーズンのJ1の展開をこう予測する。 「たとえば今年のファーストステージは6月末までの4ヵ月弱の短期決戦になるので、大混戦のまま終盤戦に突入する展開も十分に考えられる。勝ち点3を獲得するためによりリスクをかけるチームや、しっかりと守ってカウンターで応戦してくるチームが増えてくると考えられる。要はシーズンのかなり早い段階からオープンな展開の試合が多くなる可能性があるわけで、ゴール前の攻防が多くなるので見る側にとっては面白く感じられるかもしれない。サッカーの質が問われるのはもちろんだけれども、オープンな展開になってくればそこに引きつけられるファンが出てくると思うし、絶対に勝ち点3を奪うんだという選手たちの気概もピッチから伝わってくる。攻め合いのような展開が増えれば面白いし、そうなれば2ステージ制にした価値が出てくるかもしれない」 歴史を振り返れば、2ステージ制では開幕前の下馬評を大きく覆すチームが現れている。 1993年シーズンのファーストステージは鹿島アントラーズが、1994年シーズンのファーストステージはサンフレッチェ広島がそれぞれ優勝している。本命にあげられていたヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ)はシーズン半ばから調子をあげて、セカンドステージとチャンピオンシップを制して連覇を達成した。シーズンのファイナルで実現した「本命対大穴」の構図が、ファンの関心をより一層高めた。 2013年シーズンが2ステージ制で行われていたと仮定すれば、ファーストステージは最終的に年間の総合勝ち点1位となるサンフレッチェ、セカンドステージは大穴的存在のアルビレックス新潟が優勝したことになる。この2チームと年間勝ち点2位のマリノス、同3位の川崎フロンターレがポストシーズンに進出して、年間チャンピオンの座を争う図式となる。 2013年シーズンのアルビレックスは夏場以降で無類の強さを発揮し、ホームで9連勝、最後は5連勝でフィニッシュしている。前出の水沼氏は「短期決戦ではすべてのチームに可能性があるといっていい」とこう続ける。 「勢いを出すには、縦に速く仕掛けるのも有効な手段となる。アルビレックスもそうだし、サガン鳥栖やベガルタ仙台、今シーズンの昇格チームである湘南ベルマーレ、松本山雅、モンテディオ山形もすべて同じようなタイプのチーム。戦い方がはまったときには相当な強さを発揮すると思うし、そういうチームに対してポゼッションでいなし続けていくチームが王者のガンバ大阪であり、フロンターレであり、ある意味では浦和レッズもそうだと思う。見ている側はわかりづらさを感じるかもしれないけど、いまから頭であれこれ考えるよりも、ファンの方々により楽しいサッカーを提供しようという試みだと受け止めてほしい。もちろんリーグ側はメディアなどを介して開催方式を上手く説明していく必要があるし、何よりも選手たちは昨シーズンまでと変わることなく、ピッチの上で全力プレーを見せなければいけない」 冒頭で記した「スタジアム観戦者調査」はさまざまなデータを網羅していて、スタジアム来場者の平均年齢もクラブごとに算出されている。全体の平均である40.4歳に対してたとえばアルビレックスが45.4歳、大宮アルディージャが43.7歳、清水エスパルスが43.6歳を数えるなど、地方都市になるほど高齢化が顕著になっている。これはJ2にも当てはまることだ。