宿泊税、事業者の負担軽減を再確認 奄美市財源創設検討委
世界自然遺産の価値を高めていくために必要な財源の確保について話し合う鹿児島県奄美市の「世界自然遺産に関する新たな財源創設検討委員会」(委員長・松田忠大鹿児島大教授、委員9人)の第5回会合が31日、市役所であった。宿泊施設に泊まる人から徴収する宿泊税の導入を想定し、宿泊事業者へ実施したアンケート結果やヒアリングを踏まえ、税徴収に関する事務作業や決済システム改修などで負担が増す宿泊事業者の負担軽減を図る方針を確認。税額や宿泊事業者に対する奨励金などの詳細は、次回会合で議論するとした。 同検討委は自然環境の保全や、世界自然遺産登録で増加が見込まれる観光客らに対応するために必要な財源の確保を検討するため、23年8月に設置。過去4回の会合で、宿泊税を優先的に議論を進めることや、新たな財源は環境保全に限らず、遺産価値を高めるための事業に活用することなどを確認している。 今夏に市内の宿泊施設208事業所を対象に実施したアンケートでは、税額や徴収方法などについて、徴収事務や宿泊者の負担軽減などの観点から「1人1泊につきではなく、1回の宿泊に対する課税」を求める意見が35%と最も多かった。宿泊税の導入について「環境保全に力を入れてほしい」という好意的な意見があった一方、「(課税で)料金が上がれば、宿泊者が減る」と影響を懸念する意見もあった。 関係者ヒアリングでは市内の宿泊事業者を代表して、あまみ大島観光物産連盟宿泊委員会の平淳一氏が「市内では施設ごとに決済方法が異なり、現金の場合は徴収事務や管理、キャッシュレスの場合は決済システムの改修などの問題がある」と宿泊業界の現状を説明。負担のない公平性を確保した徴収方法を求めた。 続くヒアリングで、県外の旅行事業者は「今回の宿泊税導入は奄美市のみと聞いているが、5市町村で行わないと旅行者の混乱を招くのでは」と懸念を示した。23年から宿泊税を導入している長崎市からは、導入に向けた宿泊事業者への支援策や導入効果などを聞き取った。 制度に関する意見交換では、「最新の宿泊者数や税を活用して展開する事業の所要額がないと検討が難しい」などの意見があり、税率(税額)や宿泊事業者への経費負担については次回会合で協議する。 議論を深めるため会合を1回追加し、来年1月に開催して制度案などについて協議する。同3月予定の最終第7回で検討報告書をまとめ、安田壮平市長に答申する。