感動の家族愛が描かれた「SEEDシリーズ」の物語　(C)創通・サンライズ

“21世紀のファーストガンダム”とのちに呼ばれるようになり、ファンに根強く愛されている「機動戦士ガンダムSEEDシリーズ」。2024年1月26日(金)には、シリーズ第1作目『機動戦士ガンダムSEED』の放送から20年余りの時を経て製作されたシリーズ最新作となる劇場作品、『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』も公開予定だ。「非戦」「平和」といったメインテーマの裏に、登場人物を巡る愛も描かれている同シリーズ。恋人への愛、友への愛、同胞への愛など、その形は様々だ。本稿では、その中から親子、家族を巡る愛にフォーカス。涙なしには観られない、登場人物たちの両親・家族とのエピソードを紹介する。 【写真】視聴者全員が泣いたカガリと父の別れ。『機動戦士ガンダムSEED』PHASE-38より ■20年が経つ今も愛されるシリーズの金字塔『ガンダムSEED』 『機動戦士ガンダムSEED』は、『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』(1991)などの作品で知られるアニメーション監督・福田己津央が手掛けたテレビアニメだ。2002年のオンエア時期から、“21世紀のファーストガンダム”と呼ばれており、20年以上が経った現在でも多くのファンに愛されている。ガンダムシリーズの人気ランキングでも上位にランクインする作品で、続編として2004年から『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』もテレビ放送されている。 舞台は「ナチュラル」と呼ばれる従来の人類と、遺伝子調整によって様々な能力が引き上げられて生まれた新人類「コーディネイター」が対立する時代。主人公の少年キラ・ヤマト(CV.保志総一朗)は、中立国であるオーブ連合首長国のコロニー、ヘリオポリスで穏やかな毎日を過ごしていた。そこにコーディネイター側の軍事組織ザフトが襲来したことから物語は大きく動き出す。キラは自身を取り巻く様々なものを守るため、モビルスーツ「ストライクガンダム」のパイロットとなる。 ■自身の境遇に戸惑い続けたキラ。両親との邂逅、そして別れに号泣 コーディネイターであるキラだが、ザフトの侵攻によって平和な日常が壊れたこと、友人たちがナチュラルであることなどから、ナチュラル側の軍、地球連合軍の一員として戦争に身を投じていく。当初は「戦いたくない」という意思をはっきりと抱えていたが、避けられぬままに経験を重ねるうち、「自分にしかできない役割がある」と認識。様々な葛藤を越え、乗艦した戦艦アークエンジェルの貴重な戦力となっていく。 一方、キラの両親、友人たちの両親は地球にあるオーブ本国へと逃れていた。アークエンジェルもまた、紆余曲折がありながらオーブ本国へとたどり着く。家族との再会の機会が得られ、喜ぶ友人たち。しかしキラは、コーディネイターであることからつらく苦しい境遇に向き合わされていることから、「今会えば、コーディネイターとして自身を生んだことを責めてしまう」と、両親との再会を断ってしまう。やがてアークエンジェルは次なる目的地へと向かうため、オーブを離れることに。「一段と激しさを増す戦禍の下では、もう二度と会えないのかもしれない」と、キラ、両親はもちろん、取り巻く人たちもまたそのことを理解していた。 オーブの前代表であるウズミ・ナラ・アスハは、再会を果たせぬままでいる彼らのことを気にかけていた。彼は最後のチャンスに望みをかけるべく、港の送迎デッキにキラの両親を呼ぶと共に、周囲の人間を通じて、キラを送迎デッキが目に入るアークエンジェルの甲板に呼び出す。艦が出港し、少しずつ離れていくアークエンジェルとオーブ。「叶わないか…」と、キラの両親、ウズミが覚悟したそのとき、キラの視線が2人の姿を捉える。 泣き崩れる母と、その肩を抱きながらキラに向かって頷く父。そこには、単純に再会し言葉を交わす以上の親子の絆が存在していた。 ■すれ違いの先にあった信頼関係。カガリは父を失うと同時に、かけがえのない家族の存在を知る 「中立国のオーブが自領内での地球連合のモビルスーツ開発を黙認している」。そのような噂を聞きつけ、ヘリオポリスを訪れていた少女カガリ・ユラ・アスハ(CV.進藤尚美)は、調査の最中にザフトの襲撃に遭遇する。「この目で真実を確かめるまでは帰れない」と覚悟を決め、避難の列を外れる彼女だったが、その様子をキラに見られ、捕まってしまう。 別の避難ルートを探す2人は、途中で工場内に保管されているモビルスーツを発見。信じていたオーブの裏切りを目の当たりにした彼女は、失意のまま救助ポッドへと乗り込み、戦禍を逃れる。地球に戻ったカガリは、父ウズミに詰め寄るが、ウズミはオーブが中立の立場であることを主張するばかりで、望むような答えを得られなかった。そのような状況に納得のいかない彼女は、世界の現状を自分の目で確認するためにオーブを飛び出していく。 ザフトの攻撃により、地球への不時着を余儀なくされたアークエンジェル。カガリはレジスタンスとして活動している際、キラと再会したことがきっかけで同艦へと乗り込む。その後も続くザフトの追撃に対し、アークエンジェルはカガリの機転もあり、オーブに逃げ込む。そこでカガリは彼らと行動を共にする意思を見せるが、ウズミの「銃を取るばかりが戦いではない」という言葉に胸を打たれ、艦を降りることを決意する。 しかし、その後の戦いで地球連合軍を離脱したアークエンジェルは中立国から庇護を受けるべく、オーブに再度寄港する。地球連合軍は「協力しないのであれば、敵とみなす」との通告をオーブに突きつけ、従わなかった同国へ侵攻を始める。最後まで抗戦したアークエンジェルとオーブだったが、戦力差の前に敗戦の色が濃厚となると、ウズミは宇宙への発射装置「カグヤ」で、キラやカガリの乗るアークエンジェルを宇宙に退避させる。オーブと共に散るウズミの姿が、カガリにとっての最後の父の姿だった。 覚悟を決めたウズミはカガリに別れを告げる際、「そなたの父で幸せであった」という言葉と共に、1枚の写真を手渡している。写っていたのは、母親らしき1人の女性と、その手の中に抱かれる双子。裏には、その双子の名前と思われる「キラ」「カガリ」の文字が刻まれていた。 父親だと思っていた存在が本当の父親ではないと、別れのときに初めて知ったカガリ。しかし、血は繋がっていなくても、そこには紛れもない親子の絆があった。それは同時に、大切な仲間だと思っていた存在が家族になった瞬間でもある。カガリ、ウズミ、キラの3人の間には、『SEED』ストーリー中でも屈指の、親子愛・家族愛が描かれている。 ■父の存在・母の死と決別して目指した共存の道。考え方の違いに翻弄されたアスランの物語 『機動戦士ガンダムSEED』における“もう1人の主人公”、アスラン・ザラ(CV.石田彰)は、ザフトに所属するコーディネイターだ。彼はナチュラルとコーディネイターが本格的に対立するきっかけとなった地球連合軍による核ミサイル発射事件、「血のバレンタイン」で母を失っている。そのような背景から、軍人となり戦うことを決意した。父パトリック・ザラはコーディネイター側の国家プラントの国防委員長を務め、婚約者のラクス・クラインは同国の最高評議会議長を務めるシーゲル・クラインの娘にあたる。士官アカデミーを首席で卒業したことを含む一連のバックグラウンドから、アスランはプラント及びザフトのエリートとして、未来を嘱望されていた。 キラとは幼年学校の頃からの幼馴染みだったが、キラが地球連合軍の一員として戦争に参加したことから、戦場ではお互いに敵として対峙していくことになる。アスランもまたキラと同様に、部隊の中心として自分が相手を討たなければならないことに責任と戸惑いを感じながら、戦争へと参加していた。しかし、アークエンジェルが地球連合軍、ザフトのどちらにも属さない第三勢力として平和の道を目指し、ラクスやウズミなどの考えに触れるうち、アスランもキラと共に歩むことを決意するのだった。 アスランにとってザフトと敵対することは、プラント国防委員長である父親と決別することを意味している。そこには、先に紹介したキラやカガリとはまた別の、親子・家族の物語が存在している。ストーリーの終盤、あくまでもナチュラルの殲滅にこだわるパトリックは最終兵器ジェネシスの発射をめぐり、部下と言い争う。お互いに譲歩できない中で先に銃を取り出したパトリックだったが、部下から予期せぬ反撃を食らってしまう。ジェネシスの発射阻止を目指すアスランが司令部にたどり着くと、そこには銃撃され瀕死の父の姿があった。ザフトを抜けて、コーディネイターとナチュラルが共存できる道を模索した息子と、最期まで「コーディネイターであること」を貫いた父。アスランの目線から見る『機動戦士ガンダムSEED』は、考え方の違いによって引き裂かれた親子の物語だ。 ■『SEED FREEDOM』の公開に備え、「SEEDシリーズ」を予習しておくなら今のうち 「非戦」「平和」といったメインテーマの裏に隠された、親子愛・家族愛のエピソード。その息吹は、ヒロインの一角であるフレイ・アルスターや、キラの仲間である地球連合軍のムウ・ラ・フラガにまつわるエピソードからも感じ取ることができる。また、続編『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』の主人公シン・アスカ(CV.鈴村健一)も同様だ。 特に、キラ、アスラン、シンは『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』の予告映像に登場しており、重要な役割として物語に関わってくることが予想される。ドラマが面白い作品だけに、それぞれのバックグラウンドの予習はしておきたいところ。そして、本稿にあるようなざっくりとした予備知識は、複雑な設定を持つ「SEEDシリーズ」において、ネタバレというネガティブな意味以上に、本編の理解を助けるものとなるはずだ。