「超少子化」の韓国、運動部のある学校が10年間で3割近く減った パリ五輪選手団は1976年以降で最小、スポーツ弱体化が憂慮される現場で何が
7月26日開幕のパリ五輪に韓国が派遣する選手団が、1976年のモントリオール大会後で最小規模となった。サッカーなど団体競技で出場権を逃したことが直接の理由で、人数が少なくても好成績となる可能性はあるが、韓国内ではスポーツの弱体化への憂慮が出ている。世界最低水準の「超少子化」で、スポーツをする子どもの絶対数が減り、小・中・高校の運動部は10年間で3割近くなくなった。スポーツをする環境にどんな変化が起きているのか。(共同通信ソウル支局 富樫顕大) 【写真】店先に憧れの人が…「突然のことで信じられなかった」ダルビッシュとSNSで交流の韓国ファン「行動も発言も、全てが好き」
※筆者が音声でも解説しています。「共同通信Podcast」でお聴きください。 ▽球技ほぼ全滅 4月、サッカー男子のパリ五輪アジア最終予選で韓国はインドネシアに敗れ、五輪連続出場が9回で途切れた。サッカーが人気競技であるだけに、韓国メディアは「韓国スポーツの危機」などと深刻さを訴えた。 だが、団体球技はサッカー以外もほぼ全滅だ。パリ五輪に出場権を獲得したのは、ハンドボール女子だけ。全競技を通じての出場者は、最近の200~300人台を大きく下回る140人台となった。日本が今回、海外開催で最多の400人超となるのとは対照的だ。 開幕前から、伝統的に強さを誇るアーチェリー以外に、競泳の黄宣優(21)、金禹旻(22)、バドミントンの安洗塋(22)、卓球の申裕斌(20)などに金メダルの期待がかけられた。それでも、大韓体育会が掲げる金メダルの目標数は、2021年の東京大会の6個より少ない「5個」。2008年北京大会と2012年ロンドン大会で金メダル13個を獲得した後、下り坂が続いている。
▽才能より意志 韓国は昨年、女性1人が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率が、0・72と過去最低を更新した。日本の1・26(2022年)と比べても著しく低い。 韓国は一部の小・中・高校に、それぞれ少数の運動部があり、エリート選手を養成してきた。しかし、少子化が進む中、運動部を有する学校は、2012年の5281校から2022年の3890校に約26%減った。 ソウル近郊の中学のテコンドー部コーチ、朴昌順さん(47)は「昔は才能がある選手を選抜したが、今はやりたいという意志が重要だ」と語る。約15年、中学生を指導しているが「客観的に評価するならば、以前の子どもたちの方が運動能力があった」と打ち明けた。 朴さんは「時代が変わり、子どもがけがをしないよう親が願い、格闘技をする子が減った」とも指摘する。韓国がかつて強かった柔道やテコンドー、レスリングは2021年の東京五輪で金メダルが一つもなかった。パリ大会では、柔道女子に在日コリアンの金知秀(23)=兵庫県姫路市出身=と許海実(21)=東京都江戸川区出身=が出場する。金メダルを取れば韓国の柔道女子としては28年ぶりとなる。