【はじめて読むBLマンガ10作品】「BLアワード2024」の話題作も! 年間2000冊読むソムリエが厳選
今年SNSでも話題になった最新作
『カメレオンはてのひらに恋をする。』 表現することへの情熱は人一倍なのに「演技が大げさすぎる」と言われてばかりの劇団員・蒼井は、同じ大学の後輩でろう者のケイトと出会う。これまで耳で聴く世界しか知らなかった蒼井だが、伝えたいという気持ち、伝わる喜びを誰よりも分かり合えるケイトと、手話を架け橋に心を繋げていく。 難しいテーマにも臆さず、目で聴こえた、心が聴こえたという二人の喜びにこちらまでうれしくなるような、ポジティブなエネルギーにあふれた作品。物語はまだ始まったばかりですが、これから二人に何が起こるのかワクワクさせられます。言語としての手話の豊かさ、細やかさにも気づかされます。 一度社会に出たけれど、何かの理由で立ち止まったり、心を休めていたり、次に進む準備をしていたり。ただ前に進むことだけが人生じゃない、と思えてくるような3作です。
穏やかに紡がれる日常に、心が安らぐ
『カントリー・ダイアリー 春から夏へ』/『カントリー・ダイアリー 秋から冬へ』 工房用に目をつけていた山の中の空き家に、誰かが越してきた。様子を見に行った家具職人・宇佐は、田舎暮らしはおろかDIYの経験もなく、知り合いもいない様子の新住人・胡桃沢をなんだか放っておけず、荒れ放題の家をあれこれ修繕しはじめる――。 北国の豊かな自然を背景に、大工仕事、畑作業、おうちごはん、近所の人たちとの交流など、巡る四季や日々のできごとがふたりのやりとりを中心に淡々とやわらかに描かれていきます。雨の日はお休みだったり、一枚曲がったタイルに味があったり、初めて収穫したカブが嬉しかったり、何もないようで実は豊かな生活に、しみじみとなんども読み返したくなります。
翻訳という仕事を介して育まれる“元同僚”との新たな関係
『スモークブルーの雨のち晴れ』 燃え尽きて製薬会社のMRを退職した38歳の吾妻は、かつて同期でトップを争い、一度だけ関係を持ったことがある因縁のライバル・久慈と8年ぶりに再会する。在宅翻訳者の久慈を手伝うことになった吾妻は、翻訳の仕事や、久慈の生家で過ごす時間を心から楽しむようになっていくーー。 「お前ならどう訳す?」「いいね」二つの言葉がすとんと心に届き、吾妻の時間が動き始めるのと同時に、止まっていた久慈の世界もまたゆっくりと動き出します。少しずつ深まっていく2人の関係性ですが、なかなか決定的な一言の出ない二人にこちらまでやきもき。翻訳解説コーナーもあり、豆知識が増えたり、翻訳のお仕事に自然と興味がわいてくるかも。