基本メンテナンスで100年間! HEツーリッター・スポーツ(2) 1924年を感じさせない製造品質
年式を感じさせない製造品質と滑らかさ
イグニッションをオンにし、スターターのボタンを押す。エンジンはすぐに目覚め、太いエグゾーストパイプから低い燃焼音が響き出す。ベントレー 3リッターのサウンドに、近いといえなくもない。 トランスミッションは、100年前の機械だと考えれば操作が楽しい。クラッチペダルは信じられないほど軽く、ミートポイントを掴みにくいが、ダブルクラッチを挟めば変速は滑らか。シフトレバーの位置が悪く、3速と4速では内装に手が挟まれそうになる。 当時のHE社は、ツーリッターを「羽ばたく鳥のように素早い」と表現した。現代の水準では速いといえないものの、80km/hでの巡航は予想以上に快適。トルクは太く、勾配に差し掛かっても速度を保てる。 エンジンは、回転を引っ張ると心地良いサウンドを放ち始める。だが、トランスミッションのギアノイズが隠しがち。ブレーキは効きが弱い。かなり踏み込まないと、満足できる制動力は得られない。この辺りは、当時のベントレーに及ばないだろう。 ステアリングホイールは軽く回せる。旧式なウォーム&ナット式のラックは、適度なレシオで、遊びは大きいが予測しやすい。フロントアクスルの安定性は低いとはいえ、1世紀も前のクラシックカーを運転することは大きな喜びだ。 製造品質の高さや、滑らかな各部の動きなどは、むしろ年式を感じさせないほど。5年間保証というサービスも、HE社にとっては無理のある内容ではなかったのかもしれない。技術力の高さに、唸ってしまった。
HEツーリッター・スポーツ(1922~1925年/英国仕様)
英国価格:595ポンド(新車時)/12万5000ポンド(約2438万円/現在)以下 生産数:-台 全長:4114mm 全幅:1626mm 全高:-mm 最高速度:104km/h(予想) 0-97km/h加速:-秒 燃費:7.8-8.5km/L(予想) CO2排出量:-g/km 車両重量:-kg パワートレイン:直列4気筒1982cc 自然吸気サイドバルブ 使用燃料:ガソリン 最高出力:13ps 最大トルク:-kg-m ギアボックス:4速マニュアル(後輪駆動)
サイモン・ハックナル(執筆) ジョン・ブラッドショー(撮影) 中嶋健治(翻訳)