シラサギやサッカーボールなどを描いたヨドコウ桜スタジアムの壁画（大阪市東住吉区で）

　スプレー缶やペンキで描かれる芸術性の高い壁画「ミューラル」を店舗や事務所に導入する企業の動きが広がっている。街のにぎわい創出のほか、アートに触れる機会を住民に提供したり、アーティストを育てたり、といった効果が期待できることから、地域貢献活動の一環として関心が高まっている。（井上絵莉子）

　りそなグループの関西みらい銀行針中野支店（大阪市東住吉区）で8月上旬、店舗の外壁（縦8メートル、横20メートル）いっぱいに描かれたミューラルがお披露目された。

「地域と未来」をテーマにした壁画を披露する関西みらい銀行の西山社長（右）ら（同社提供）（大阪市東住吉区で）

　「地域と未来」をテーマに、大阪在住のアーティストLANPさんが、花を持った未来の生き物が、緑の自然の中を歩く姿を鮮やかに描いた。お堅いイメージの銀行らしからぬ外観に、近所の女性（75）は「突拍子もない絵に驚いたが、街が華やかになるので良い」と話した。

　ミューラルは、落書きと異なり、壁の管理者や所有者の許可を得て描かれる。海外では街づくりの手法として定着している。関西みらい銀の西山和宏社長は「地域が発展しないと、我々も存続できない。本業以外でも色んな形で地域のにぎわい作りに貢献していきたい」と語った。

すしと浮世絵をモチーフにしたくら寿司「新世界通天閣店」の壁画（大阪市浪速区で）

　関西みらい銀の壁画をプロデュースしたのは、スタートアップ（新興企業）の「WALL　SHARE（ウォールシェア）」（大阪市）で、2020年の創業以来、約160作品を手がけた。

　その一つとして回転ずし大手くら寿司は22年4月、大阪の観光スポット・新世界にある「新世界通天閣店」（大阪市浪速区）の外壁（縦11・7メートル、横8・4メートル）に、すしと浮世絵をモチーフにしたミューラルを描いた。訪日客らが写真撮影を楽しむ姿が今も見られる。

　ヤンマーホールディングスも22年から、ミューラルを使ったアート文化醸成を目指すプロジェクトに取り組んでいる。スポンサーを務めるサッカーJリーグのセレッソ大阪の本拠地「ヨドコウ桜スタジアム」（大阪市東住吉区）の北西入場口にある縦3・55メートル、横16・2メートルの壁に、年に3回程度、異なるアーティストの作品を発表している。

　広報担当者は「インスタグラムなどでも取り上げられることが増えた。将来的には『ミューラルの聖地』と呼ばれるような場所を目指したい」と話している。