パリから高速鉄道で45分、シャンパンの町ランスを1日観光
私は日本で始めた弓道をフランスでも続けています。普段は近的(的までの距離が28m)だけなのですが、フランスではめずらしい、遠的(今回は的までの距離が60m)の大会が9月にランスであったので、遠的をできる貴重な機会と、ランスまで行くことにしました。 【画像】宿泊したホテルはキッチン付き。お手頃価格のわりにはよいホテルでした パリからランスまでは高速鉄道TGVで45分ほどです。十分に日帰りできる距離なのですが、ランスに行くのは初めてだったので、せっかくならと前泊をして、ランス市内を1日観光してきました。 ランスに着いてまず感じたのは「小ぎれいな町だな」ということ。全体的に新しいのです。夫の実家があるオルレアンにも似ているな、と思ったらそれもそのはず。第一次世界大戦で町のほとんどが破壊されたところが、第二次世界大戦で甚大な被害を受け再建されたオルレアンに似ているのです。 パリから近いところも似ていますが、もう一つ、二つの町の大きな共通点はジャンヌ・ダルクです。15世紀前半、神の声を聞いたとして現われた少女は、フランスの危機を救うも、その2年後、異端として火刑に処されます。 ジャンヌ・ダルクはオルレアンを解放後、ランスのノートルダム大聖堂(Cathedrale Notre-Dame de Reims)でシャルル7世の戴冠式を実現させました。このほかにもフランスのほぼすべての王がこの大聖堂で戴冠式を行なったことにより、ランスは「戴冠式の都市」(la Cite des Sacres)または 「王たちの都市」(la Cite des Rois)とも言われています。 ランスの町で一番有名なノートルダム大聖堂は、ユネスコの世界遺産に登録されています。フランス三大大聖堂(パリのノートルダムは入っていません!)の一つに挙げられる大聖堂ですが、なかに入ると美しいステンドグラスのコレクションにうっとり。ほとんどのステンドグラスは第一次世界大戦後に再建されたものですが、ゴシック建築の特徴である「バラ窓」(ステンドグラスで作られた円形の窓)から、2000年代に作られたモダンなものまであります。 そのなかでも私が一番見たかったのはマルク・シャガールのステンドグラスです。シャガールらしい深い青をベースに、ところどころに見える赤が、外の光を受けて際立っていました。 大聖堂正面の一部は修復工事中でしたが、左側にある入口横に並ぶ像に注目です。天使たちのうち、一番右側にいる天使は「微笑みの天使(Ange au Sourire)」と呼ばれており、ランス復興のシンボルとなっています。 夜のガイド付きツアーにも参加しましたが、昼とはまた違い、ほの暗い夜の町も雰囲気満点。最後には大聖堂のプロジェクション・マッピング見て終了しました。プロジェクション・マッピングは夏と冬に開催されています。 大聖堂の隣にあるトー宮殿(Palais du Tau)は戴冠式ゆかりの品などを展示していた場所。現在は工事中ですが、2026年に再オープンする予定です。名前がMusee des Sacres(戴冠式の博物館の意)になるとのことですが、ガイドさんは歴史ある建物の名称変更を「安易だ」と、とてもイヤがっていました。 大聖堂の次に行きたかったのは藤田嗣治が建設に関わったフジタ礼拝堂(Chapelle Foujita)です。美しいフレスコ画が壁一面に描かれており、そのなかには藤田と君代夫人の姿も。この礼拝堂には、藤田夫妻が埋葬されています。 カーネギー図書館のアール・デコ様式の建物も必見です。図書館なので静かに読書をしている人たちのジャマをしないように、そっとなかをのぞいてきました。ここには藤田嗣治が挿絵を描いためずらしい本も保管されています。 ランスで最も古い教会の一つであるサン・ジャック教会、コルドリエ修道院跡、紀元前3世紀のローマ時代に建造されたマルス門、ランス第一次世界大変戦没者慰霊碑なども見ました。こうしたものが町のあちこちにあって、限られた時間でどこに行こうかとうれしい悩みが。 町の外れにあるシャンパーニュ公園にも、名前に引かれて行ってみました。何もないと言ったら何もない広々とした公園なのですが、広場にはピアノが置いてあり、弾いている人がなかなか上手だったので、日が暮れていくのを眺めながら、終日歩き回ったあとの心地よい疲れを感じつつ、しばしゆったりとした時間を過ごしました。 ランスのお菓子といえばビスキュイ・ローズ(Biscuit rose、ピンクのビスケットの意)でしょう。これを、ランスの名産品であるシャンパンに浸して食べます。有名なのは老舗のFossierのものですが、直営店の一つに行ったところ、店内は見事にどこもかしこもピンク! 試食したビスキュイ・ローズは私には甘過ぎるのですが、シャンパンに浸して食べるのであれば、ちょうどよい甘さになるのかも? といっても私は下戸なので、ビスキュイ・ローズよりは甘みを抑えたピンク色のサブレ、フランボワーズのビネガー、製菓用にビスキュイ・ローズを砕いたものをお土産に買いました。 一人旅で時間もなかったので、大きな市場はのぞいたものの、町中ではこれという名産品を食べられませんでした。でも翌日の遠的大会では、地元の人たちがパテ・アン・クルートという、肉のパテをパイ生地で包んだものを食べさせてくれました。そして遠的で入賞した人への景品はやっぱりシャンパン! 私も1本いただき、充実の2日間を終え、ご機嫌でパリに戻ってきました。
トラベル Watch,荒木麻美