トミー・ジョン手術から虎のエースに。阪神連覇のキーマン、才木浩人のターニングポイント
2020年オフに右肘のトミー・ジョン手術を受け、2022年に復帰すると、2023年はキャリアハイとなる8勝をマーク。阪神の連覇のキーマン、才木浩人がスターとなる前夜に迫った。 【写真で振り返る】プロ野球選手たちのスターとなる前夜
2024年大活躍、プロ7年目の阪神・才木浩人
2023年シーズン38年ぶりとなる日本一を達成した阪神。 2024年は交流戦終了時点で広島に次ぐ2位と昨年ほどの強さを見せられていないが、ゲーム差は2.5と僅差だけに連覇も十分に狙える位置につけていると言えるだろう。 そんなチームにあって、2024年大活躍を見せているのがプロ7年目の才木浩人だ。 2020年にはトミー・ジョン手術を受けるなど苦しい時期もあったが、2023年はキャリアハイとなる8勝をマークするなどチームの日本一に貢献。 2024年は開幕から好調を維持し、ここまで12試合に登板して8勝1敗、防御率1.20と抜群の成績を残しているのだ。 ちなみに勝利数だけでなく、奪三振71、完投3、完封3はいずれもリーグトップの数字である。完全にチームのエース格へと成長したと言えるだろう。
大器の片鱗を見せていた高校時代
そんな才木は阪神の地元とも言える兵庫県の出身。中学時代はそれほど評判の選手だったわけではなく、地元の公立高校である須磨翔風に進学している。 ただ兵庫は公立高校も力のあるチームが多く、須磨翔風も2023年秋、2024年春と2季連続で近畿大会に出場している。 才木はそんなチームで力をつけて2年時にはエース格へと成長。春の県大会で準決勝、夏の兵庫大会でも準々決勝進出を果たしている。 才木の名前がスカウト陣から聞かれるようになったのもこの頃からだ。 しかし2年秋は県大会の初戦、3年春は地区予選で敗退するなど、なかなか勝ち切れず、実際のピッチングをようやく見ることができたのは3年夏の兵庫大会、対報徳学園戦だった。 相手が県内でもトップの強豪ということもあって、会場となったベイコム野球場には日米合わせて12球団、25人のスカウトが集結。この数字からも才木の注目度が高かったことがよくわかるだろう。 ちなみに相手の報徳学園では当時1年生だった小園海斗(現・広島)が1番ショート、3年生の佐藤直樹(現・ソフトバンク)が3番ライトで出場している。まさに相手にとって不足はない試合だった。 そんななかで才木は初回、いきなり小園と佐藤から三振を奪う上々の立ち上がりを見せる(小園は振り逃げ)。特に素晴らしかったのがその腕の振りだ。 当時のプロフィールを見ると187cm、79kgとなっておりまだまだ細身だったが、長いリーチを柔らかく使える豪快な腕の振りは迫力十分。楽に投げているようでも打者の手元で勢いがあることがよくわかった。 ちなみにこの日の最速は145キロをマークしており、当時のノートには以下のようなメモが残っている。 「テイクバックの小さい少し独特なフォームだが、高い位置から腕が振れており、ボールの角度は素晴らしい。リリースでボールをしっかり抑え込み、縦に腕が振れるため左右のぶれも少ない。 (中略) まだ体が細く、下半身は少し頼りないところがあるが、しっかりと軸足に体重を乗せてからゆったりとしたモーションで投げられ、全体的なリズムは良い。 6回以降は下半身の粘りがなくなり、上半身の力に頼って低めのボールの勢いがなくなる。スタミナ面や体の細さはまだまだ課題だが、素材の良さは十分。上背に見合う筋肉量がついてくれば150キロ以上出そうな雰囲気がある。 (中略) フォークはストレートと変わらない腕の振りで投げることができ、ブレーキもあり決め球として使えるボール。フォーク以外の変化球はもう少しレベルアップが必要」 高校生らしい課題はありながらも、当時から大器の片鱗を見せていたことがよくわかるだろう。 試合は小園に2安打、佐藤にはタイムリーとホームランを打たれるなど中盤以降に失点を重ね、最終的には1対5で敗れている。 ただ不運なヒットも多く、与えた四球はわずかに1で、111球で完投していることからもわかるように、ある程度のまとまりも備えていたことも確かだ。