ガールズケイリン當銘直美が学んだプロの自覚と覚醒の理由 規則違反での停学&復学も涙ながらに語った
【涙ながらの復学】 當銘は心を入れ替えた。再び豊橋競輪場に通い、練習漬けの日々を送った。競輪学校から課された課題をきっちりとこなし、2週間に1回提出する日記も毎日じっくりと考えて書いた。さらに周囲に迷惑ばかりかけてはいけないと、アルバイトもこなした。その時に大切なことに気づかされた。 「自分が稼いだお金を、当時の私みたいなだらしない選手には賭けられないと思いました。一生懸命働いて得た大事なお金を賭けてくださる。だからしっかりとした覚悟を持って競輪選手をやらなければいけないなと痛感しました」 そして翌年4月。復学の試験に見事合格した。停学期間にお世話になった新田をはじめ、練習仲間、周囲の方々に電話で報告した時には、涙があふれて声にならなかった。 取材中も「いろんな人に電話をした時に、みんなが優しくて......」と声を詰まらせ、涙を流した。 晴れて114期生として入学した當銘は、「停学中の半年間で学んだことを改めて確認しながら生活ができた」と自分を律して学ぶことができた。とくに競技規則については「走っている最中でもすぐにパッと頭に出てくるくらいしっかり勉強した」という。競輪学校の順位は14位と上位には入れなかったが、学業優秀賞を手にすることができた。 【覚醒を促した2レース】 2018年7月のプロデビューから少しずつではあるが前進してきた當銘。デビュー戦こそ6着、6着、7着と惨敗だったが、その2カ月後には初勝利を飾り、翌2019年には初優勝を飾った。その後は優勝回数こそ多くはなかったものの地道に勝利を積み重ね、今年7月には通算100勝をマークした。
そんな當銘が覚醒のきっかけを掴んだレースがふたつある。ひとつが2023年の年末に開催された小倉競輪場での決勝。実力トップレベルの小林優香(福岡・106期)、日野未来(奈良・114期)らと走った大晦日のレースだった。 「優香さんと未来さんがいたレースで優勝できました。最後に未来さんを抜いた時に、自分は気持ちで相当損をしていたことに気がつきました。強い選手、本命選手の都合のいいレースをしてしまっていた、相手にビビッて小さいレースをしてしまっていたと。相手がどう出るかではなく、まずは自分の力を信じること、練習してきたことをしっかりと出しきるのが大事だと考えるようになりました」 年明けのレースから見違えるようなレースを披露し、1着の数字が並んだ。そうして迎えた4月のオールガールズクラシック。これがきっかけを掴んだふたつ目のレースだ。 「(2日目のレースで)微差で決勝戦を逃してしまいました。戦えていなかったわけではないのに、気持ちが足りなかったから、微差になってしまったと感じました。『絶対に決勝に行くんだ』という強い気持ちを持っていたら、道中の踏み具合も絶対に変わっていたと思います。ただ同時に力はついてきたのかなと感じました。悔しさ半分、手応え半分というレースでした」 そこからさらに練習に対するモチベーションが上がり、前述のとおり、6月のパールカップでは、「絶対に決勝に行くんだ」という強い気持ちで臨んだ結果、西の女王に輝いた。