「副業できないのなら退職します」26歳塾講師の訴えに困惑…会社は「副業禁止」を貫くべきか
副業・兼業など多様な働き方を希望する人が増え、企業にも副業容認の機運が高まる中、それでも「副業禁止」を就業規則に定めている会社はまだ存在する。そんな会社でもし副業をしたいという社員があらわれたら……。社会保険労務士の上岡ひとみ氏が事例をもとに解説する。 【マンガ】38歳会社員が絶句…2500万の「軽井沢の別荘」を買ったら思わぬ出費
就業規則で副業は禁止していたのに…
S学習塾は生徒数20人弱と小規模ながら、馬場塾長(55歳、仮名=以下同)の有名学習塾で培った経験と実績、きめ細やかな指導が評判となり、ここ数年で難関中学校への合格者数を伸ばしています。最近は世間の中学受験熱の影響か、定員以上の入塾希望者があり、馬場塾長は人手不足に頭を悩ませていました。ある日、馬場塾長は英語講師の池田先生(26歳、仮名=以下同)に呼び止められます。 池田先生「塾長、今すこしお時間いただけますか? 副業についてご相談があって」 馬場塾長「副業? どういうことですか?」 池田先生「私、勤務外の時間を使って英語学校で講師をしようかと思っているんです。社会人向けだから夜の数時間で週に1、2回なんですけど、スキルアップできそうだし収入も増えるし頑張ってみたいんです。候補の英語学校にはS学習塾に勤めていることを話したうえで、ぜひ働いてほしいとお返事いただいたので、勤務時間の調整などご相談したくて」 馬場塾長「えっ、そんな話が進んでいるの? うちの就業規則では副業は禁止になっていたはずだよ? 就業規則違反は困るよ! 副業することで本業がおろそかになるかもしれないじゃないか」 池田先生「この間、ニュースでみましたが、国が副業・兼業を推進していますよね。確か、労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であって会社が制限かけるのは許されないはずです。塾長には応援していただけると思っていました。もし副業できないのであれば、こちらを退職する考えもあります」 馬場塾長はぐうの音も出ず、少し時間をくださいと、池田先生に副業の話をいったん保留してもらうことにしました。