このご時世に600kg切りのアルトが登場!? スイスポはパワフルハイブリッド化の軽量ホットハッチ化? 期待しかないスズキの10年先を見据えた技術発表の中身
ある意味「ほぼ使われない」機能は省くという割り切った考え方
今回の技術発表会においては、スイフトに搭載される最大熱効率40%を実現した 3気筒「Z12E」型エンジンに48Vマイルドハイブリッドを組み合わせた「スーパーエネチャージ」のプロトタイプが展示されていた。 これまでスズキが採用しているハイブリッドシステムは12Vとなっているが、システム電圧を48Vへ高めることで、より電動領域を拡大することを目指しているという。また、48VのISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)をエンジンとトランスミッションの間に挟むという構造のため、あらゆるエンジンとトランスミッションに適応するというのも注目だ。 たとえば次期スイフトスポーツがあるとして、6速MTとマイルドハイブリッドを組み合わせることも可能となる。実際の商品企画として成立するかは別として、技術的にはエンジン縦置きの軽バンや軽トラ、ジムニーもマイルドハイブリッド化することが可能となる。 開発中の「スーパーエネチャージ」は、機構的にはマイルドハイブリッドだが、エンジンとの接続にクラッチを用いることで回生ブレーキによるエネルギー回収量を増やし、EV走行モードを拡大することが期待できるシステムだ。それでもスズキは「不必要なバッテリーを積むのは環境負荷も大きく、ユーザーへのコスト負担も大きくなる。必要最低限の搭載量にとどめる“バッテリーリーンな電動車”を目指す」とアナウンスしている。BEVについても、乗車人数を絞ったり、航続距離を割り切ったりすることで、手の届きやすいラインアップを展開すると理解できる。 ともすれば、クルマ好きはテクノロジーオリエンテッドなマインドになりがちで、世界初の先進技術に注目しがちだが、それがユーザーメリットになっているかは疑問もある。BEVにおいても、高出力モーターと大容量バッテリーを組み合わせた重厚長大なモデルが目立ってしまうが、こと普及フェイズになるとユーザーが真に求めるのはコストパフォーマンスに優れたモデルであることはいうまでもない。 最近のトレンドとなっている「SDV(ソフトウェアデファインドビークル)」についても、そうしたスズキの姿勢は一貫している。SDVといえば、OTA無線通信により機能アップデートできるような先進性を求めてしまうが、そのためにユーザーが負担しているコストは、表に見えない部分も含めて少なくない。 スズキの提案する「SDVライト」は、必要最小限のOTAアップデート機能にとどめ、整備工場でのアップデートも併用することでコストバランスを重視するのがポイントだ。ちなみに、SDVライトの“ライト”は軽い(light)という意味ではなく、適切な(right)という意味となっている。まさにスズキらしい電子アーキテクチャーといえるだろう。 最後に紹介するのは、ライフサイクル全体でのリサイクル性を考えた易分解設計だ。要は解体しやすく、素材ごとに部品を仕分けやすい設計思想を取り入れていくわけだ。 「小・少・軽・短・美」を理念とするスズキのモデルは、もともと原材料の使用量などは少なめだが、さらに積極的にリサイクルを進めることで、カーボンニュートラル社会への貢献度を上げようというアプローチは、けっして派手さはないが、持続可能な自動車社会につながるものとしておおいに注目したい。
山本晋也