渋谷すばる「人が好き、だから難しい」さまざまなクリエイターと制作して再認識した歌うことの意義
結局、人が好き
──1stアルバムから、今回のアルバムにかけて、音楽制作に対する考え方が変わった点はありますか。 渋谷 これまでの作品がとにかく自分と向き合ったものがほとんどだったんです。自分がそのときにやりたい表現とか、自分の内側に向いたものが多かったので、そこの変化はありますね。今回はファンの方にとにかく楽しんでもらいたい、という方向でした。楽曲に関しては自分の意見は何も言っていないですし、というところは変化ですね。 ──気持ちの面ではいかがですか。 渋谷 すべて自分で作りたくてひとりになったので、アルバム3枚を自分で作れたということは自分の中で自信になりました。今回も1曲だけ入れてますけど、作ろうと思ったらいつでも作れるし、というところなので、それはそれでいいし。何か新しい表現はないかな、というのは常に頭の中にあることなので、それがトイズファクトリーさんとの出会いもあって、というところで、何かいいタイミングでしたね。 ――渋谷さんの楽曲をお聴きしていると、「人間」そのものに対して、ストレートな思いを歌っていらっしゃる印象がこれまでありました。何か、渋谷さんが音楽を作る上で大切にされていることのひとつなのかな、と思ったのですが。 渋谷 やっぱり、人に伝えるために歌っているし、作っているし、自分が生きてきたすべてが歌につながると思うんです。結局、人が好きなんでしょうけど、だから難しいんですよね。自分ひとりだったら、「自分が自分」と感じられないから、難しい。思うようにいかないこともたくさんあるけど……苦手だと思う人がいたとしても、その人がいるからがんばれるし、結局は自分次第なんですよね。そういうことをずっと考えて生きています。みなさんはそんなことないんですかね。でも、僕みたいなのがいて、音楽として何か言われたときにハッとさせるような存在でいられたらいいな、と思います。僕も好きなバンドや、いろんな音楽からそうやって救われてきたので。
文=ふくだりょうこ 編集=梅山織愛