渋谷すばる「人が好き、だから難しい」さまざまなクリエイターと制作して再認識した歌うことの意義
改めて歌を歌うことが好きだと認識した
──今作をお聴きすると、3rdアルバムまでとはまったく違う渋谷さんなので驚きました。レコーディングされるなかで、新たな発見などはあったのでしょうか。 渋谷 今まではとにかく自分の作品や、自分の表現に集中してやっていたんですけど、それとはまったく違っていました。今回、自分はとにかくボーカルに徹したので、作っていただいたものをいかに表現できるか、というところに集中していましたね。そこが大きな違いです。改めて歌を歌うということが好きだし、自分にとっては大きなものなんだな、ということを再認識できた時間でした。 ──これまでと気持ちの作り方も違いましたか。 渋谷 まったく違いましたね。自分で作るものはとにかく自分自身と向き合って作ることが多かったんです。でも、自分以外の人が自分を見て、「こんなのどう?」って作ってもらうと、やっぱり目線が違います。その目線はファンの方と近いのかな、という気もしましたね。 ──逆に自分の中で変わらない、再認識したような核の部分はありましたか。 渋谷 歌う上ではすべてを含めた曲が言いたいこと。……歌詞、とかではなく、曲が持っている雰囲気や空気感をつかむというか、曲に寄り添って歌う、ということは無意識にやっているんだと思います。自分ではわからないんですけど、曲によって声が違うと言われるのはそういうところなのかな、という気がします。 ──ご自身では、そういう変化は意識せず? 渋谷 していないですね。自分としては、やっていることはどの曲でも同じなんです。「この曲は歌い方も含めて、こういう表現なんだろうな」という自分なりの解釈を一曲一曲やっているだけ。 ──そういった解釈はどのあたりから始められるんですか。 渋谷 今回はデモをもらってからとにかく聴きました。レコーディングまでにかなり歌い込みましたし、その時間が大きかったですね。それで作ってくださった方の思いだとか、いろんなものを感じましたし、制作期間中は自分なりに解釈して、自分のものとして表現する、ということをやっていましたね。 ――その過程でもディスカッションなどはあったんですか? 渋谷 レコーディングに至るまでにある程度、自分の中では作り込んでいっていたので。テイク自体は、多くても2、3テイクぐらいでした。その中で、スタッフの方と「この部分をたとえばこういうふうに変えてみたらどう?」なんて話して、それで聴いてみて、やってみます、ぐらいのやりとり程度でしたね。 ──ちなみに、アルバム収録曲の中で難しかったかな、という曲はありますか? 渋谷 えっ、全部難しいな。……でも特に「Lov U」は難しかったかな。自分ではなかなかやらない表現だったりするので、人と一緒にやらせてもらったことでできたものだと思います。単純にメロディラインとしても複雑で難しかったんですけど、「Lov U」という曲の世界観を表現しきれるかな、という点ではちょっとチャレンジでした。 ──ここ最近はテレビでの歌唱も多くありましたが、実際にテレビで歌われての手応えはありましたか。 渋谷 何ってことではないんですけど、楽しいなあ、と思って。たしかに久しぶりなんですけど……テレビ局の建物に入ることが久しぶりやな、と思って(笑)。いざリハーサルとか本番、カメラの前で歌うのは染みついていたものがあるのかわからないですけど、そこは普通の感じでしたね。