東日本大震災から5年 南相馬市長が17日に会見(スピーチ)
太陽光を含めた再生可能エネルギーの整備を進めている
帰還することにちゅうちょをしていたり反対をしている市民もおりますけれども、これは、多くは放射線不安だけではなくて、帰還を早めることで賠償が少なくなる、とりわけ財物賠償が少なくなるというような国の制度設計があるからこそ、20キロ圏内、他の自治体と同様に同じく賠償を受けられるべきだというふうに考える人たちがいるのも事実です。同じ避難指示を受けた住民が同じ賠償を受けるべきであるというのは当然なことだと考えていて、国に対しても東電に対してもこのことは強く、私のほうからは要望しています。 残念ながら国がこの制度設計、つまり帰還が早くなったときに賠償がそれだけ少なくなってしまうということについては、まだ積極的な解答を出していない。逆に早く戻った人間が損をするというような構造については残念であるけれども変えられていないのが実態です。 私は原発事故直後からこれだけ多くの人間が生活をできなくなってきている、従って原発には頼らないまちづくりを進めるということを宣言して、昨年3月に脱原発都市宣言をたぶん国内で初めてやった首長だと思います。復興総合計画の中で2030年までには南相馬市内で全て再生可能エネルギーによってエネルギーを賄うということを書いています。この計画に沿って今、太陽光を含めた再生可能エネルギーの整備について進めているところでございます。 いま、新しい産業として植物工場を太陽光エネルギーを使いながら運用したり、新しい植物工場であるとかトマト生産工場を再開するなど、今までにない形の農業への取り組み、そして新しい産業としてのロボット産業への参入など、いままでになかった試みを進めています。
市民が全て戻るのは不可能 新しい人たちを呼び込む施策が必要
東日本大震災と東電の原発事故の際に私は世界的災害を受けているというふうに申し上げてきました。従って南相馬市は世界的な復興を成し遂げるんだということを、当時宣言してきました。いままでのとおりの復興、国がメニューを示すような復興だけでは再興できないという思いからこのようなことを考えておりました。 南相馬市民が全て戻るということは不可能です。従って、新しい人たちを呼び込む施策が必要ですし、そのためには南相馬市だけしかやっていないような施策展開が必要です。安全性を担保するような産業再生が必要ですから、私は先ほど申し上げましたように、エネルギーとしては再生可能エネルギーを最優先にしながらのエネルギー政策を展開しますけれども、子供たち、若い世代に対しては新しい挑戦と同時に生活することが安全であるということを担保できるような施策も同時に展開しなきゃいけないということで取り組んでいます。 いま、南相馬市内には南相馬市の除染作業員だけではなくて、浪江であるとか飯舘村への除染作業員の宿舎が建てられていて、現在、土木作業員も含めると8000人の作業員が南相馬市に住んでいます。このようなことから、交通渋滞が起きて交通事故が多くなる、また犯罪が多くなるというのも実態です。いま、一時的にではあっても市民が不安に駆られるようなことではあってはなりませんので、警察等とも連携しながら防犯対策というのも、われわれが行っている最大の課題であり、取り組まなければならない課題でもあります。