軍事偵察衛星打ち上げ失敗をすぐに発表した北朝鮮のしたたかな皮算用
■ 国連安保理決議違反を繰り返す「悪の枢軸」 この北朝鮮の軍事偵察衛星の打ち上げは、国連安全保障理事会(安保理)の複数の全会一致の決議に対するあからさまな違反である。 日米韓をはじめ国際社会は、日米韓や東アジア、国際社会の平和と安全を脅かし緊張を高め、地域内外の安全保障情勢を不安定化させる危険があるとして非難した。当然である。 しかし、北朝鮮の核ミサイル開発を一向に阻止できないのは、背後にそれ助ける「悪の枢軸」としての中露の策動があるからだ。 ロシアは、北朝鮮の核ミサイル開発を禁じる一連の安保理決議に基づき制裁違反の有無を調べる専門家パネルの任期延長の決議案を、拒否権を発動して否決した。 そのため、同パネルは、2024年4月30日で活動終了に追い込まれた。 その背景には、北朝鮮がロシアのウクライナ侵攻を助けるため弾道ミサイルや砲弾などを供与し、その見返りに、ロシアから核ミサイル開発の技術支援を受けている野合の実態がある。 他方、中国の戦闘機が5月6日、「黄海」の公海上で、国際社会が国連を通じて北朝鮮に科した制裁を履行するため哨戒中の豪海軍ヘリコプターの進路を妨害するように照明弾を投下した。 なぜ、そのような危険極まりない行動をとったのか。 実は、これに先立ち、北朝鮮製の武器を輸送したロシア船が中国東部浙江省の舟山新亜造船所に停泊したことが衛星画像で判明していた(英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)発表)。 それによって、中国と北朝鮮がロシアの軍事力再建を支援している事実とともに、北朝鮮からロシアへの武器輸送および中国の港での停泊は、国連安保理決議の制裁措置に「明白に」違反していることが白日の下に晒されたのである。 このため、中国は自国のみならず、ロシアの国連安保理決議違反がさらに露見するのを避けるとともに、北朝鮮の制裁逃れを助けるため、「黄海」の公海上で豪海軍ヘリコプターの哨戒行動を妨害する行動に及んだと見られている。 北朝鮮の核開発を阻止するために制裁を科した国連安保理決議を、それに一致して同意投票した常任理事国の中国とロシアが破っている事実は、極めて重大である。 米国と「大国間競争」の渦中にある中国とロシアが、北朝鮮の核ミサイル開発に手を貸している実態は、今後国際社会がどのような努力を重ねたとしても、それを防ぐことはできないという厳しい現実を突き付けていることにほかならないのである。