【セントライト記念回顧】進化遂げたアーバンシックの完璧な立ち回り ルメール騎手の戦略も冴えわたる
アーバンシックの進化
完璧な立ち回りで重賞タイトルをつかんだアーバンシックは母の母ランズエッジ、母の父ハービンジャー、父スワーヴリチャードだからレガレイラと同血になる。ローズSで反応の悪さがアダとなったレガレイラに対し、アーバンシックは完璧な競馬を完成させた。騎手も同じルメール騎手なわけで、競馬は不思議だ。 どちらも皐月賞では後方からいささか遅れ差しの形になり、惜敗。距離延長+直線が長いダービーで巻き返すのではと期待され、レガレイラ2番人気、アーバンシック4番人気も、結果は5、11着。スローで動けなかった。 秋緒戦で春と同じような内容で敗れたレガレイラに対し、アーバンシックは見事な立ち回り。ここにきて血統面だけでは語れない部分が出てきた。パドックでもレガレイラより歩幅が狭く、歩くピッチが速い。元来、反応が悪いわけではなく、春はまだ体が追いついていないため、あえて控えて競馬をしていたのではないか。 秋になり、自身の走りと体が合致してきたことで、立ち回りの巧さが出てきた。折り合いの不安もなく、菊花賞も楽しめる。今度はダノンデサイルの背後を追走していても不思議はない。位置さえ取れれば、決め手は決して劣らないはずだ。母の母ランズエッジはディープインパクトの妹であり、父はダンスインザダーク。距離の心配はいらない。競馬の形が完成しつつある秋は飛躍できる。
父アルアインをなぞるコスモキュランダ
2着コスモキュランダは負けて強しも、こちらは距離が微妙だろう。母サザンスピードはコーフィールドC(芝2400m)を勝ってはいるものの、芝1400~1600mで4勝をあげており、本質は長い距離向きとはいえない。その父サザンイメージもダート10ハロンのサンタアニタハンデなど中距離が中心。 そこに父アルアインだから、コスモキュランダのベストは2000m前後だろう。ダービーも一緒に途中で動いたサンライズアースに伸び負けた。中山に滅法強いなどアルアインの血が濃く、距離延長に不安が残る。アルアインもセントライト記念2着から菊花賞は7着に敗れている。もっとも、この年の菊花賞はキセキが勝った極悪馬場の年。その影響を差し引いても、不安は不安だろう。 一方でアルアインほど先行力はない。前半で脚を使わず、途中で動いて優位な位置をとり、粘り込むなど、策がないわけではなさそうだ。 権利付与の最後ひと枠3着にはエコロヴァルツ。途中でヤマニンアドホックに動かれるも、あわてず騒がず。最後は差して3着は確保した。流れ的に優位に進めた面は否めないが、先行できるということは、何度だって恵まれる可能性を秘めている。ダービーに比べると、粘り強さを増しており、先行する競馬に馬も慣れてきた。もうひと押し効くようになれば、楽しみも増すだろう。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
勝木 淳