悪童が「ジョゼのために死ねる」 常に選手だけを見ていた指揮官モウリーニョの“求心力”。かたや会長や社長とベッタリの監督は…【コラム】
「あの監督は、いざとなれば逃げる」
FCポルト時代、ジョゼ・モウリーニョが欧州王者にチームを導く直前(チャンピオンズリーグ準決勝の数日前)、筆者はインタビューしたことがある。 【画像】2024年夏の移籍市場で新天地を求めた名手たちを一挙紹介! 当時から、モウリーニョは唯我独尊の気配があって、“外側”に対しては軋轢を起こしていた。例えば、彼は国内のメディアのインタビューをほとんど受けなかったし、ファン・サポーターに媚びるようなところも一切なかった。結果が出なかったら、つるし上げられていただろう。 モウリーニョは、そうした外野からの声を一切、意に介していなかった。逆に言えば、“勝つことですべてを切り従える”という覚悟を感じさせた。潔いほどだった。 そんなモウリーニョが見ていたのは、選手だけだった。選手一人一人が何を考え、何を悩み、何にモチベーションを感じているのか。または、それぞれの選手をどう組み合わせ、どのタイミングで一緒にプレーさせたら最大限の力を発揮するのか。それだけを考え抜いて、選手たちに正対していた。 「ジョゼ(・モウリーニョ)のために死ねる」 当時、「悪童」と言われたベニー・マッカーシーは控えに回されていたにもかかわらず、こともなげに言ってのけた。「ジョゼは俺のすべてを知っているから。控えなのはそれなりの理由がある」とも続けていた。それだけで、モウリーニョの監督としての求心力が分かるだろう。 今の時代、監督のリーダーシップは外側に向けて取り繕うことができる。しかしマスコミを使えば使うほど、選手に対する掌握力は弱くなる。会長や社長とベッタリとなれば安泰だ。 しかし、選手はほとんど本能的に察知する。 「あの監督は、いざとなれば逃げる」 例えば負けた試合後、監督がゴール裏のサポーターの前にわざわざ立って、大声で釈明する。その場は、一体感には生まれるかもしれない。「あの人はクラブ愛がある、熱い人だ」と人気者になるかもしれないが...。 当の選手たちは、そうした監督の行動を冷めた目で見ている。「選手を守る」などとしゃしゃり出てくる姿に、感動を覚える選手はいない。なぜなら、それは解決策のない指揮官が虚勢を張り、保身に走ったパフォーマンスにしか見えないからだ。 否応なく、チーム内には失望感が充満する。こうなった組織が転落するスピードは、信じられないほど速い。そして復活することは、ほとんどないだろう。 「求心力」 それを欠いた集団は悲劇だ。 モウリーニョは、選手の方を徹底的に見ていた。もちろん、うまくいくこともいかないこともあるだろう。しかし、それを貫くことで、ようやく監督は監督としての肖像を作ることができるのだ。 文●小宮良之 【著者プロフィール】 こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
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