２１日、ドイツのフランクフルトから南西に１５０キロメートル離れた小都市クッペンハイム。広大な草原の真ん中にベンツのロゴが描かれた工場が見えた。 工場に入るとベルトコンベアが記者の頭の上を過ぎ約１０メートルの高さまで続いた。ベルトコンベアには寿命を終えた電気自動車の廃バッテリーが載せられ移動していた。靴箱サイズのバッテリー（モジュール）はベルトコンベアの終端で粉砕された後、プラスチック、鉄、銅、アルミニウムなどが抽出され袋に入れられた。 「ベンツの電気自動車に搭載された廃バッテリーがここに集まれば原料の９６％を抜き取ることができます」（ベンツのバッテリーリサイクル総括）。 この工場で処理できるバッテリーモジュールは年５万個。電気自動車約５０００台に使われる量だ。抽出された原料は再び新しいバッテリーを作るのに使われる予定だ。 メルセデス・ベンツはこの日、クッペンハイムで６８００平方メートル規模のリサイクル工場開設式を開き、バッテリーのバリューチェーン自体の構築意志を知らせた。開設式にはドイツのショルツ首相とバーデン・ビュルテンベルク州のバルカー環境相も参加した。 欧州連合（ＥＵ）は２０３１年からバッテリーにコバルト１６％などリサイクル原料を一定割合以上使うよう義務化した。これに伴い、バッテリーリサイクル市場規模も２０２５年の８０億ドルから２０４０年には２０８９億ドルに成長すると予想される（ＳＮＥリサーチ）。　この日ショルツ首相は「自動車の未来必須要素であるバッテリーを持続可能な方式で生産するためにはリサイクルが重要だ」と話した。 ベンツは廃バッテリーリサイクルを通じて原料需給から生産までバッテリーバリューチェーン全般に独自の技術力を確保している点を強調した。８月に仁川（インチョン）で起きたベンツ電気自動車火災事故を意識したように、ベンツが内在化しているバッテリー技術を詳細に公開した。ベンツは火災後に世界１０位圏のバッテリーメーカーである中国ファラシスのバッテリーを最高級電気自動車に搭載したという指弾を受けた。現在韓国ではベンツの車の所有者が提起した関連訴訟も進行中だ。 ベンツはバッテリー研究と生産は本社があるシュツットガルトで、リサイクルはクッペンハイムでするという「バッテリー・メイド・バイ・ベンツ」を強調した。メルセデス・ベンツ・コリアのマティアス・バイトル代表は現場で「われわれは危機を克服し前に進むだろう」と話した。 ベンツはクッペンハイムのバッテリーリサイクル工場の屋上に太陽光発電システムを設置して再生可能エネルギーも生産していると紹介した。また高い温度で乾燥して原料を抜き取る既存のバッテリーリサイクル方式ではなく、液体原料を利用（湿式）する方式を使って放出される熱を減らしたと説明した。