マクドナルド創業者が大切にした「たった1つの成功の方程式」とは?
ビジネスパーソンや、これから起業しようと考えていたりする人にとって、もっとも大切にしたい「ものの考え方」とはなんでしょうか。藤井孝一さん監修の『誰もが知っている億万長者15人のまさかの決断』(青春出版社)から、世界的大企業の創業者となる人の思考力や発想力、リーダーシップ、日々の習慣など、ほかの人のとはどこが違っていたのか――レイ・A・クロックのエピソードを紹介します。 ● フランチャイズ料の問題が立ちはだかる 前回は、ミキサーを販売するセールスマンだったレイ・A・クロックが、マクドナルド兄弟のハンバーガー店と出会い、そこにビジネスチャンスを予見した発想力を紹介した。クロックはハンバーガーに将来性を感じ、即座に自らが兄弟の代理人となってフランチャイズを展開したいと申し出たのだ。 だが、マクドナルド兄弟の店を全国で展開するための交渉に入ったクロックはさっそく壁にぶつかった。兄弟が提示する契約条件は厳しく、なかでもフランチャイズ料の問題が大きな壁として立ちはだかったのだ。 当時、外食チェーンのフランチャイザー(フランチャイズチェーンの本部)の多くが加盟店に高額な加盟料を要求し、さらに備品なども市場価格よりも高い値段で売って利益を得ていた。 ところが兄弟は、フランチャイズ料を高く設定することを禁止したのである。
そのため、クロックは加盟料などで儲けることはできなくなり、各加盟店の売り上げから徴収するわずかなロイヤリティで利益をあげていくよりほかなかった。 ● フランチャイズ店が成功すればフランチャイザーも成功する しかし、この非常に不都合な契約をクロックは逆転の発想で成功への足がかりに変えてしまう。法外な加盟料などでフランチャイジーを圧迫し一時的に儲けたとしても、それは長期的な利益にはつながらないとクロックは考えたのである。それどころかクロックはこう考えた。 「フランチャイズ店が成功すれば、当然フランチャイザーも成功する」 当時の外食フランチャイズ業界にはなかったこの方程式がクロックを成功に導いた。クロックが設立したフランチャイズ販売会社のマクドナルド・システムは、この方法で着実に事業を軌道に乗せていったのである。 加盟料は、当時では破格の950ドルという安さである。そして備品などを卸して儲けることもやめている。 さらに食品納入業者からはリベートを受け取らず、加盟店が少しでも安価に仕入れられるようにし、その納入業者に対してもコストを抑えるためにはどうすれば効率がよくなるのか、さまざまなアイデアを提案したのである。 お気づきのとおり、これは前回紹介したクロックのセールスマン時代の十八番である「取引先を繁盛させることにより自分の利益をあげる」という手法と同じだ。彼は経験からこうすることが、地道ではあるが成功へのもっとも近道であるということを肌で知っていたのだ。 クロックの理論はみごとに的中し、マクドナルドは急速に成長していく。それはフランチャイズ展開の開始からわずか5年で店舗数が250店を超えるというスピードだった。 「フランチャイジーを繁盛させるためには、彼らに十分な協力をしなければならない」 この彼の公正なビジネスへの姿勢は、クロックを成功させるとともに外食フランチャイズ業界全体のシステムのあり方さえも革新的に変えていったのである。