本格的料理店の数に驚きー北海道の自然求め、東川町移住組がもたらした変化
今年の1月、都内で行われたある移住・交流・地域おこしのイベントに行ってきた。およそ300もの地方自治体のブースが並び、わが町の魅力を伝えようと一生懸命PRに力を入れている。 日本全体でも人口減少に転じている中、都市部への人口流出による減少の課題を抱えている自治体が多い。観光で訪れるならまだしも移住となるとそう簡単に決断できることではないだろう。 しかし、その中でも人口減少を食い止め、増加へと転じさせている自治体がある。そんな町の一つ、北海道のほぼ中央に位置する東川町。その理由はなぜ、魅力はいったいどこにあるのだろうか。
町のほぼ中心地にある道の駅「道草館」で、町の飲食店を紹介するグルメマップを配布している。道草館のスタッフによる手作りのマップだ。このマップをたよりに町のお店をいくつか周ってみた。 人口約八千人の田園風景が広がる町にしてはその店の数と料理のジャンルの多さに驚く。しかも首都圏にあるようなおしゃれで本格的な料理のお店が多い。町ではそういうお店が増えていったことにより、そこを目当てに訪れるお客さんも増えていったという。 今年2月、この町にフランス料理店をオープンしたオーナーシェフの村上智章さんも移住してきた一人だ。神戸で修行した後、北海道の食材をよく使っていたことや奥様の実家があることで、独立を機に札幌でお店を開いた。その後、食材へのこだわりから生産者に近い場所と北海道らしい自然を求め、子供の成長に合わせて移住を決めた。 移住者の誰もが最も不安を抱えるのが地元の人たちとの関わり合い。村上さんは言う。「でもそんな心配はここ東川町に来てみたらなかった」。 先代が起こした「写真の町」という町おこしの試みから、次の世代がこの町をどうよくしていこうかと同じ飲食関係を営む仲間と話し合う絆も生まれているという。 私も東川を訪ねている間に、移住してきた人何人かに話を聞いたが、「外から来た人に対してこの町の人たちは非常に温かい」とみんな口をそろえて言うことに驚いた。 町の将来を他人事とせず、自分ごととする精神が生まれた証かもしれない。移住した当初はお客さんが来てくれるか心配だったそうだが、以前の札幌でのお客さんはもちろん、最寄りの旭川空港から10分という立地は東京からのお客さんも行きやすくなったと喜ばれているという。それより、近くの旭川や地元東川の人が来てくれることが嬉しい、と村上さんは話してくれた。(つづく) (2017年7、8月撮影・文:倉谷清文) ※この記事はTHE PAGEの写真家・倉谷清文さんの「フォト・ジャーナル<町民の心捉えた写真の町 北海道東川町>倉谷清文第7回」の一部を抜粋しました。