「ふるさと納税」を法規制 制度開始から10年超で迎えた転換点
“官製通販”と揶揄されることもあった「ふるさと納税」が、大きく変わろうとしています。2008年度の制度スタート当初こそ、寄付金額は伸び悩みましたが、2015年度に税控除手続きが簡素化されると、その後は右肩上がりで増え続けました。同時に返礼品競争が過熱し、豪華な特典を贈る自治体が続出。制度改正によって寄付額が伸びた一方、自治体間でふるさと納税を奪い合うような事態が勃発したのです。そうした中で先月末、返礼品の規制などふるさと納税制度を見直す改正地方税法が成立しました。 【写真】“ウェブショッピング”ならふるさと納税の趣旨ではない 元日本一の平戸市・黒田市長
返礼品の抑制求める通知は2015年から
各自治体が用意している返礼品を一覧で見ることができるインターネットのポータルサイトも登場し、自治体間のふるさと納税争奪戦は激化しました。ふるさと納税の制度設計にあたり、総務省は返礼品に換金性の高い金券類を用意することに制限していました。そうした要請はあったものの、返礼品の具体的な金額や産地などは規定していませんでした。ふるさと納税をかき集めようとする自治体は、返礼品に高額な肉や海産物を用意するようになります。また、海外からの珍しい輸入品を返礼品にした自治体もありました。 当初の趣旨から大きく逸脱したふるさと納税に対して、実直に取り組む自治体から多くの批判が上がりました。また、ふるさと納税制度の提唱者でもある福井県前知事の西川一誠氏は、そうした状況を憂慮。本来の制度の趣旨に賛同する自治体を集めて、2017年に「ふるさと納税の健全な発展を目指す自治体連合」を発足させています。 地方自治体から、ふるさと納税のあるべき姿を模索する動きが出る一方、総務省も行き過ぎた返礼品競争に歯止めをかけるべく動き出しています。 「これまでは総務省が一定のガイドラインを策定し、それを地方自治体が順守するといった暗黙のルールでしかありませんでした。このほど改正された地方税法では、総務省が事前に審査し、指定する方式に変わります。これにより、“返礼品は寄付額の3割以下にする”“地場産品に限る”といったガイドラインを守らなかった地方自治体は指定団体から外れます。指定団体から外れた地方自治体は、ふるさと納税による税控除を受けられません」と話すのは、総務省自治税務局市町村税課の担当者です。 今回の地方税法改正で、ふるさと納税制度が大転換したことになります。しかし、趣旨を逸脱した地方自治体に対して、これまで総務省がまったく何もしていなかったわけではありません。