「ふるさと納税」を法規制 制度開始から10年超で迎えた転換点
昨夏の総務相発言で過剰な返礼品激減
総務省の調査によると、寄付額の3割超に相当する返礼品を贈っていた自治体の数は、2016年度には1156もありました。こうした状況を是正するべく、総務省は2017年度と2018年度の2度にわたってふるさと納税の返礼品のあり方を是正する通知を出しています。 この通知には法的な強制力はありません。それでも2017年度の通知によって、3割超の返礼品を贈っている自治体数は841へと減少しました。その後も緩やかに3割超の自治体は減少を続け、2018年度の通知を出す前には490、そして通知後の2018年6月には327まで減少したのです。 「総務省の通知は、効果があったと思います。それでも、その時点では300以上の団体が寄付額の3割超の返礼品を続けていました。健全なふるさと納税制度を育てていくためにも、総務省は是正に取り組まなければなりませんでした。そうしたことから、2018年9月に野田聖子総務相(当時)から制度を見直す方針が発表されたのです」(同) 野田総務相による発表は、地方自治体に大きな激震を走らせました。野田発言により、3割超の返礼品を贈っていた自治体は激減。2018年11月1日時点までに25に減っています。そして先月、改正地方税法が成立しました。
いっそのことふるさと納税をなくしたら?
ふるさと納税の返礼品競争が過熱したことにより、本来なら納められるはずの税金が納められずに肉や魚に変わっているという批判があることは確かです。そうした批判をなくすためにわざわざ地方税法を改正するなら、いっそのことふるさと納税そのものを廃止するという考え方もあります。なぜ、ふるさと納税制度そのものを残そうとするのでしょうか? 「2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震、2018年に広島・岡山を中心に起きた大規模な水害といった自然災害では、ふるさと納税を活用して被災地に多額の義援金が集まりました。被災地を支える仕組みとして、ふるさと納税が有効に機能したのです。そうしたことから、ふるさと納税の制度は残していく方針にしています」(同) 地方税法の改正で、健全なふるさと納税は実現できるでしょうか? 制度スタートから10年が経過したふるさと納税は、大きな転換期を迎えます。 (小川裕夫=フリーランスライター)