センバツ甲子園 全力プレーに拍手 長崎日大、初戦突破ならず /長崎
第95回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社など主催)第4日の21日、県勢の長崎日大は3―4で龍谷大平安(京都)に敗れた。2022年春に続き初戦突破はならなかったが、全力でプレーした選手たちにスタンドからは惜しみない拍手が送られた。【高橋広之、松本美緒】 長崎日大は初出場で8強入りした1993年以来、30年ぶりの春の1勝を目指したが、あと一歩届かなかった。 長崎日大は1点を追う三回表、広田樹大(きだい)が中前打を放ち、下坂聖磨(せいま)の犠打で2死二塁に。続く平尾大和主将が中前適時打を放って同点に追い付いた。平尾の父康一さん(39)は祈るようにグラウンドを見つめ、「よくぞ、打ってくれた」と笑顔を見せた。 三回以降、先発の広田は切れの良いスライダーを生かした投球で粘り強く抑えた。四回裏には、龍谷大平安が2死一塁から盗塁を試みたが、長崎日大の豊田喜一捕手が素早い送球で刺殺した。 1―1で迎えた七回表、長崎日大は機動力を生かしたビッグプレーを見せた。加藤太陽(あさひ)の左前安打、松本健人の犠打などで2死一、三塁に。一走の栗山由雅(ゆいが)が二盗を決めて相手捕手が二塁に送球した間に、三走の加藤が本塁を駆け抜け、重盗に成功。勝ち越した。栗山は「自分の持ち味である嫌らしさが出せた」。 さらに広田が適時打を放ち、1点を追加。広田は「三回の第1打席では直球を打ち返していたので変化球でくると思っていた。読み通りだった」と語った。 しかし、直後の七回裏、龍谷大平安が2死から長短打や暴投で3点を挙げて逆転。長崎日大は救援の西尾海純(みいと)が力強い投球で後続を抑えた。西尾の母あゆみさん(42)は「昨秋の九州地区大会決勝で打たれた悔しさをばねに練習していたので、成長を感じた」と語った。長崎日大は反撃に望みをつないだが、力尽きた。 長崎日大は二つの暴投など守備の乱れが響いた。平山清一郎監督は「守備のミスから難しい展開になってしまったので、そこを鍛え直して夏にまた戻って来たい」。攻守の要の豊田は「七回裏は悪い流れを止められなかった。夏に向けて修正し、勝てるチームを作る」と前を見据えた。 ◇友とダブル出場 広田樹大投手 長崎日大の先発・広田樹大投手(3年)は、初の県勢ダブル出場を果たした海星の松尾文斗選手(同)と中学時代、バッテリーだった。龍谷大平安を相手に広田投手は緩急を生かした粘り強い投球を見せ、松尾選手はアルプススタンドから見守った。 2人は地元の波佐見町の中学で出会いバッテリーを組んだ。冷静に状況判断する広田投手と、積極果敢な松尾選手。捕球がうまくリードも巧みな松尾選手に、広田投手は全幅の信頼を寄せていた。当時の監督の松坂武志さん(47)は「投手が強気、捕手が冷静というバッテリーが多い中、2人の場合は逆だったが相性は抜群だった」と振り返る。 進学先は広田投手が長崎日大、松尾選手が海星と分かれたが、2人は「高校の県大会決勝で対戦しよう」と誓い合った。約束は2022年秋の県大会決勝で実現。5番・左翼で出場した松尾選手が2安打を放ったが、試合は広田投手が完封し、2―0で長崎日大が優勝した。九州地区大会で長崎日大は準優勝、海星は4強。中学生のころに描いた夢を超え、県勢として初の2校同時出場を果たした。 この日は龍谷大平安に敗れたものの、広田投手は持ち味を発揮。試合後、広田投手は「直球とチェンジアップの質の向上が夏に向けての課題。夏には他校も力をつけてくるので打たせないようにしたい」と誓った。 試合を見守った松尾選手は「樹大は強い気持ちでよく頑張っていた」とたたえた。【高橋広之、松本美緒】 ◇父と二人三脚で 城島慶太郎選手 九回表2死一塁、長崎日大の代打・城島慶太郎選手(3年)が打席に立った。低めの直球を振り抜いたが、飛球は左翼手のグラブに収まり、試合は終わった。 父慶介さん(47)は、長崎日大が春夏通じて甲子園に初出場した1993年のセンバツでプレー。三塁手として活躍し、8強入りに貢献した。 城島選手は、父の雄姿を録画した映像を見て育ち、小学3年生の時にソフトボールを始めた。「もっとうまくなりたい」と自宅で打撃練習をするようになり、慶介さんも毎晩のように付き合った。 「父のように活躍したい」。そう志し、長崎日大に進学。チーム練習を終えて帰宅してからも慶介さんとティー打撃や変化球に対応するためのバドミントンのシャトル打ちを毎晩続け、センバツの背番号14をつかみ取った。 龍谷大平安戦では三塁コーチを務め、ピンチの場面では伝令に2度走って仲間を励ました。スタンドから見守った慶介さんは「良い試合だった。夏にはやってくれるはず」と期待を込めて語った。【高橋広之】 〔長崎版〕