ソフトバンクの「ドラ1」神戸弘陵・村上泰斗は「山本由伸2世だ!」とスカウト陣が断言する理由 ストレートの回転数はメジャーのトップ級を上回る
理想は藤川球児の「火の玉ストレート」
村上も住むことになる「若鷹寮」は、室内練習場とつながっている。 グレーの三角屋根が特徴的なその室内練習場は、内野フィールドが60メートル四方。打撃練習用に6レーン、ブルペンも4レーン。それこそ、24時間、いつでも思いついたら練習できるようになっている。 投手歴2年半で、ドラフト1位にまで駆け上がった。その能力の伸びしろたるや、まだまだ、計り知れないものがある。「福岡にまだ一度も行ったことがない」という村上だが、好物のラーメンとともに、12球団随一の育成環境がある福岡での生活が「楽しみです」と笑う。 村上にとっては、それこそ願ったりかなったりの施設が揃っているのだ。その“虎の穴”で目指したいという、村上の未来図も実に明確だ。 数字でも明らかにされたその“伸びる剛速球”で描く理想は、阪神・藤川球児監督が現役時代に称された「火の玉ストレート」だという。 「ずっと言い続けているんですけど、真っすぐは自分の中でこだわりたいポイント。その代名詞である藤川球児投手の『火の玉ストレート』。自分も、地を這うような、そういう球を投げられるようにやっていきたいです」。 全盛期の藤川が投じたストレートは「2700回転」をマークしたといわれている。 その将来像を実現できるだけの潜在能力を持っていることは、綿密に解析されたデータがきっちりと示している。だからこそ、ソフトバンクは迷いなく、全国的にはまだ何の実績も見せていない『原石』ともいえる村上泰斗の1位指名を決断できたのだ。 数年先に見せてくれるであろう“進化した姿”が、もう楽しみでならない。 *** この記事の前編では、村上泰斗投手が野球部で頭角を現すまでのエピソードや、フォームに取り入れた2人の“大投手”について取り上げている。
喜瀬雅則(きせ・まさのり) 1967年、神戸市生まれ。スポーツライター。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当として阪神、近鉄、オリックス、中日、ソフトバンク、アマ野球の各担当を歴任。産経夕刊連載「独立リーグの現状 その明暗を探る」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。産経新聞社退社後の2017年8月からは、業務委託契約を結ぶ西日本新聞社を中心にプロ野球界の取材を続けている。著書に「牛を飼う球団」(小学館)、「不登校からメジャーへ」(光文社新書)、「稼ぐ! プロ野球」(PHPビジネス新書)、「ホークス3軍はなぜ成功したのか」、「オリックスはなぜ優勝できたのか 苦闘と変革の25年」、「阪神タイガースはなんで優勝でけへんのや?」、「中日ドラゴンズが優勝できなくても愛される理由」(以上いずれも光文社新書) デイリー新潮編集部
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