袴田事件と共に学ぶ。アメリカの冤罪との闘い│映画「黒い司法 0%からの奇跡」
最近の朝日新聞の調査で、「検察を信用できますか?」という質問があった。 これに69%の人が「いいえ」と答え、その理由の筆頭は「冤罪を生み出している」というものだった。 まさにこれは先月の、袴田巌さん再審無罪判決の影響の大きさを物語っていると言えるだろう。有罪の決め手とされてきた三つの証拠は、いずれも捜査機関の捏造であったと指摘された。また、人権を無視した取り調べの状況については、以前からメディアでも批判されている。 今回取り上げる『黒い司法 0%からの奇跡』(2019、デスティン・ダニエル・クレットン監督、原題は”Just Mercy”)は、アラバマ州のある田舎町で殺人の罪を着せられ死刑囚となった黒人男性と、ジョージア州からやって来た人権派の若い黒人弁護士が、数々の壁にぶつかりながらも無罪を勝ち取るまでの物語。 事件の弁護士だったブライアン・スティーブンソンが著した『黒い司法 黒人死刑大国アメリカの冤罪と闘う』が原作となっている実話である。 ■黒人差別と犯罪と司法 1987年、アラバマ州。仕事の帰りに警察に車を止められ、昨年起きた若い女性の殺害事件の容疑者として逮捕されたウォルター・マクシミリアン(ジェイミー・フォックス)は、死刑判決を下される。 同じ頃ジョージア州では、苦学の末にハーバードのロースクールを出てインターン中のブライアン・スティーブンソン(マイケル・B・ジョーダン)が、ある死刑囚との面会を通じて死刑制度への疑問を抱く。職員に手荒く引っ張られながらその黒人死刑囚の歌う聖歌がタイトルに被ってくるところで、本作品のテーマが黒人差別と犯罪と司法であることがわかる。 二年後に弁護士としてアラバマにやって来たブライアンは、死刑囚支援の活動家である友人エバ(ブリー・ラーソン)の助力を得ながら、ウォルターの弁護にあたることとなる。 いかにもエリートの若い弁護士に「お前には絶対にわからない」と投げやりな態度を見せていたウォルターも、ブライアンの熱意と誠実な姿勢を信じる気になり、共に闘う決意を固めていく、というストーリーだ。