【F1】珍しくレッドブル陣営がミス連発…フェルスタッペン、ノリスに抜かれたとしても、5秒差以内フィニッシュなら優勝濃厚だった
◇尾張正博のギョロ目でチェック・オーストリアGP編 F1第11戦オーストリアGP(6月30日)は後味の悪い結果となってしまった。激しくトップを争ったレッドブルのマックス・フェルスタッペンとマクラーレンのランド・ノリスが残り8周で接触事故を起こし、両者とも優勝を逃したのだ。 直接の原因が、フェルスタッペンのアグレッシブなドライビングにあったことは事実だ。レーススチュワード(審議委員会)は「横並びになって3コーナーにアプローチした際、ターンインする直前にフェルスタッペンが左側に移動したことが接触の主な原因」として、10秒ペナルティーを科した。 レース後のフェルスタッペンはペナルティーを不服としながらも、「僕としてはクルマのパフォーマンスがあまり良くなかったこと、チームが普段やらないミスを犯してしまったことの方が腹立たしい」と事故の遠因を指摘。確かに、このレースでレッドブルは珍しくミスを連発していた。
一つはピットストップでのタイヤ交換作業だ。51周終わりに約7秒のリードを保ってピットインしたが、左リアタイヤの交換に手間取る。ピットアウトすると、2人の差は一気に縮まっていた。 二つ目はタイヤ戦略。履いて出たタイヤはどちらもミディアムだったが、中古のフェルスタッペンは新品のノリスに対して防戦一方となった。レッドブルがレースに残した新品タイヤはハード2セット、ミディアム1セット。他のトップチームとは逆の戦略を採り、それが機能しなかった。 最後の失敗はコミュニケーションだ。フェルスタッペンとのバトルでトラックリミット違反(走路外走行)を3回犯していたノリスには黒白旗の警告が提示され、もう1度やれば5秒ペナルティーが科せられる状況だった。59周目にノリスは3コーナーでフェルスタッペンのインを差すも、止まりきれずにコース外へ。直後にこの件が記録され、審議されるという情報が国際自動車連盟(FIA)から出された。まだ確定ではなかったものの、かなり高い確率でペナルティーが科せられることは明白だった。 つまり、フェルスタッペンはノリスに抜かれたとしても、5秒差以内でフィニッシュすれば優勝できた。ブロックし続けるよりリスクも少なく、容易だったはず。レッドブルとしては珍しい判断ミスだった。 (尾張正博=F1ジャーナリスト)
中日スポーツ