長谷部誠と岡崎慎司が本音で語る、現役生活と引退。「よくあの立場でやれてるなぁ」「才能はそんなにないと思うんですけど (笑)」
リベロとして新境地開いた長谷部。岡崎のFWとしての理想像
長谷部がフランクフルトでリベロとして覚醒したように、岡崎も自分が輝く理想のストライカー像を持っていたという。FWとしてさまざまな経験を積み重ねる中で自分の力を最大限に発揮できるイメージがつくり上げられていった。 「レスターでやってたみたいに、トップ下だけどFWにもなれる。ボールを受けたり、守備で助けたり、全部やりながらも、最後のところでチームメイト全員が俺のことを見てくれていたら、絶対ゴールを決められるっていう自信があったんです。ウェスカのときにはそうしたイメージ通りの選手になりかけていた」 だがチームが変われば状況も変わる。ウエスカではスペイン2部から1部へ見事昇格を果たしたが、1部では他クラブとの力関係も違ってくる。理想像は見えているのにそれができず、FWというポジションもあって、思うように主導権を握れないようになってしまったという。 「そう思うとハセさんは年齢とともに最終的に僕がたどり着けなかったところにたどり着いたのかなぁと思ったりします。正直うらやましかったですね。プレー面でも、ポジション面でも、達人っていうか、職人っていうんですかね。3センターバックの真ん中をやらしたら、身体能力とかそういうのも(他の部分で)カバーして、周りをさらに上の高みに連れていく存在。40歳までやってあそこまでいける人って、なかなかいない。本当にすごいなと思います」 そんな岡崎は現役引退を機に、気持ちをスパッと次のチャレンジに切り替えている。欧州の地で指導者を目指す意向であることを明言しており、「新しいチャレンジが始まる」と充実感を浮かべていた。長谷部もそうなのだろうか? 秋からU-19かU-21でコーチをする予定だとされている。 「いやぁ、僕は……正直、まだ何もないですね。何もないというのは、サッカーしかしてこなかったので。アイントラハト(フランクフルト)に残って休みをもらって、秋から(コーチとして)始めるんですけど、それが本当に自分のやりたいことなのかは正直まだ定まっていないところもある。オカちゃんはそれを明確に見つけている感じはあった。そういう気持ちでやめられるのは素晴らしいことだと思う。僕はもうちょっとしっかり休んで考えたいなと思います」(長谷部) 岡崎と長谷部。ポジションも違えば、キャリアの歩み方も違う。考え方だって、気質だって違うところが多々あるだろう。それでもサッカーへの思いは、どんな困難にも立ち向かう気概は、どちらも最高レベルに熱かった。 「またゆっくり2人で会う機会があったらうれしいですね」 長谷部はそう言って笑った。2人でどんな話をするのだろう。周りのみんなが心配するほど熱く語り合ったりするのだろうか。そこでの2人の会話から日本サッカーを明るく照らすようなアイデアが生まれたりするのかもしれない。そんなことを想像するとなんだかワクワクしてくる。 <了>
文=中野吉之伴