「恋愛離れ」とマッチングアプリ利用者拡大の関係は?世代・トレンド評論家の牛窪恵さんに聞く
「時間がかかる」恋愛を敬遠する女性たち
パートナーを見つけるツールとして、幅広い世代に浸透中のマッチングアプリ。今年9月には、東京都が人工知能(AI)を活用した婚活マッチングシステムの運用をスタートさせ、話題を集めました。アプリユーザーが増えている背景には、恋愛をめぐる、どんな意識の変化があるのでしょうか。世代・トレンド評論家でマーケッターの牛窪恵さんに聞きました。 内閣府が2022年、20~39歳の未婚男女を対象に実施した調査では、男性の約4割が一度も交際経験がなく、女性も4人に1人が一度も交際経験がないことが分かりました。 牛窪さんは、他の世代でも男女ともに恋愛離れが進んでいると見ます。「Z世代の女性にとって、恋愛はタイパやコスパが悪い。推し活などによって、恋愛の優先順位が下がっていることもあるでしょう」と牛窪さん。 「キャリアを積む30代では『仕事が忙しく恋愛どころではない』という声が増えます。40代になると、妊娠・出産の優先順位が徐々に下がり、『無理に恋愛・結婚しなくても……』と消極的になっていく。交際開始から結婚までの期間は平均3.5年以上と言われているので、『これから3年、4年もかかるなんて』と、余計に恋愛が面倒になってしまう人が多い印象です」 一方、男性の場合は、年収の低さや非正規雇用を理由に、「自分は恋愛できる身分ではない」「そんな余裕はない」などと身構えてしまう人が目立つそう。「『恋愛は男性がリードするもの』という概念がいまだに根強いため、交際経験がない男性は『どうしたらいいかわからない』と悩み、恋愛意識が下がっていくのです」と説明します。 恋愛に消極的でも「結婚はしたい」男女の支持を集めているのがマッチングアプリです。 Z世代向けの企画・マーケティングを行う「僕と私と」(東京)が、今年4月、Z世代(主に20代と定義)とミレニアル世代(主に30代と定義)に「直近で付き合った恋人との出会いのきっかけ」について聞いたところ、Z世代の21.6%、ミレニアル世代の18.8%が「マッチングアプリ」と回答し、「学校」や「合コン」などを抑えてトップとなりました。 また、15~39歳を対象とした、こども家庭庁の調査(今年7月)でも、結婚相手との出会いのきっかけの1位は「マッチングアプリ」(25.1%)で、同じく「学校」や「合コンなど」を上回りました。 「女性は30代になると『早く子どもを産まないと』と焦る人が増えるので、スピーディーに出会えるマッチングアプリを好む傾向があります。40代では、『結婚は急がないが、趣味の話題を共有できる人がほしい』などと考える女性が増え、価値観でマッチングできる点に魅力を感じるようです」と分析します。 ただ、マッチングアプリの世界は「『強者』と『弱者』に分かれる傾向がある」とも。「マッチングして終わりではなく、対面して交際へと進む必要があるので、結局、コミュニケーション能力が高かったり、積極的に行動できたりする人に有利である可能性が指摘されています。誠実でも口べたな人は、マッチングできたとしてもその先へ進みにくいのです」 相手を見つけるには、「アプリをいくつか利用してみて、自分に合うものを探したり、求める条件をより具体的に明記したりすることが大切」とアドバイスします。「最終的に交際したい1人を見つければいいので、数多くからモテる必要はありません。自分を盛ったり、個性的な趣味をマイルドにしたりしてみんなに好かれるより、『本当の自分』を出した方が、その個性を求める人に出会える確率が高くなります」 また、「なりすまし」にだまされるリスクを避けるため、「初対面の際は昼間に会うようにすること。友人など第三者を連れて行くといった対策をした方がいい」と注意を促します。