「金沢から上京の準備をしていたら」田中美里 朝ドラ『あぐり』で主演デビュー 大御所たちが現場で見せた新人への眼差し
── お芝居の楽しさを感じることはありましたか? 田中さん:最初はなかなかわからなくて、演じながら感じるようになっていった感じでしょうか。それもやはり共演者のみなさんに教わった部分が大きかったと思います。たとえば、野村萬斎さんが赤いマフラーなど象徴的な小物を自分で発注されているのを見て、台本をそのままやるのではなく、肉づけしていいんだということを知ったり。そこで台本以上のものができ上がる楽しさに気づき、役者っておもしろいかもって思うようになりました。
── 長いこと『あぐり』の放映を見ていなかったそうですね。 田中さん:そうなんです。撮影中はきっと芝居の欠点を探してしまうだろうし、初めての演技が恥ずかしくて見られなくて。でも、数年前に再放送があって、ついに見ちゃいました(笑)。もう他人が映っていました。あれから20数年経っていたので、自分のことというより、10代の子が一生懸命頑張っているなという感じ。こんなお芝居をしていたんだと思うのと同時に、このお芝居、いまはやっぱりできないなって感じましたね。いろいろな経験をしたいまの自分では、こんなストレートな表現のしかたはできないと思う。真似のできない、キラキラしたようなものがありました。
PROFILE 田中美里さん たなか・みさと。1977年生まれ、石川県出身。1996年 第4回「東宝シンデレラ」審査員特別賞受賞。1997年、NHK連続テレビ小説『あぐり』のヒロインに抜擢されデビュー。その後、数々の映画、ドラマ、舞台のみならず、『冬のソナタ』のチェ・ジウの吹替えや、ナレーションなどでも活躍。bay-FM 『Morning Cruisin'』ではパーソナリティを20年以上担当。帽子ブランド『Jin no beat shi te cassie』のプロデュースも手がける。2025年1月24日に出演映画『美晴に傘を』の公開を予定。
取材・文/小野寺悦子 写真提供/アンプレ
小野寺悦子