「金沢から上京の準備をしていたら」田中美里 朝ドラ『あぐり』で主演デビュー 大御所たちが現場で見せた新人への眼差し
── 役づくりはどのようにされたのでしょう。 田中さん:まず監督に「田中さんのままで、あぐりを演じてください」と言われました。だから、とくに役づくりを考えた感じでもなくて。脚本家の清水有生さんが、途中から「あぐりは悲しいときに笑う」というイメージで台本を書いてくださったと聞いています。清水さんいわく、台本ではすごく悲しいシーンでも、私が演じるあぐりは笑っているらしくて。それは私の中で自然と出てきた表情というか、私自身もともと、つらいことがあると逆に笑ってしまうところがあったからだと思うんですけれど。監督もそれをおもしろく受け止めてくれたのか、あまり制限せず自由にやらせていただけたのはすごく心強かったですね。
■「あぁ、守られているな」と現場で感じ ── 朝ドラの主演は相当ハードだと聞きますが…。 田中さん:『あぐり』は稽古も含めて9か月間。すべてが初めての経験で、やっぱりしんどいこともありました。撮影の休みはあったけど、そこに取材だったり、ほかのお仕事が入ったりするので、結局休みはなくなってしまう。時間がなくて、寝るか、セリフを覚えるか、という状態でした。お芝居の経験はないものの、スケジュールが詰まっているので、じっくり時間をかけられないまま、撮影が進んでしまう。そこにとまどいはありました。ただ共演者のみなさん本当に優しくて、周りに助けていただいた部分は大きかったですね。
あるシーンで私が「うっ!」と倒れる演技をしたときのことです。ひとたびOKは出たけれど、名取裕子さんに「そんな倒れ方では放送されたときに彼女が恥をかいてしまう」と言われ、撮り直すことになりました。タイトなスケジュールをさいて時間を費やし、名取さんがいちから教えてくださって。それって本当に私のことを考えてのことだと思うんです。 義母役の星由里子さんも「栄養をつけないといけないから」と、手作りのお弁当を持ってきてくださったり、「これ似合うかも」とお洋服をいただいたり、本当のお母さんのように接してくれて。里見浩太朗さんは「いまはあなたがキラキラ輝くために周りがみんなで支えてあげている。でも、これからもっと厳しい世界になるから、健康に気をつけて頑張ってね」と声をかけてくだったり。「あぁ、守られているな」と思いました。