日産ノート オーラ「オーテック スポーツスペック」が追求する走りの“上質さ”と“爽快感”を味わう
■ NISMOとは異なる味付けとは? 日産モータースポーツ&カスタマイズ(NMC)が、日産ノート オーラの「AUTECH SPORTS SPEC(オーテック スポーツスペック)」を発表した。同社はNISMOブランドとAUTECHブランドの市販モデルを同時に開発しており、今回のクルマはAURAをベースにしているという触れ込みではあるが、事実上はAURA NISMOの兄弟車といえる内容が並んでいる。中でもショックアブソーバーやバンプラバー、パワーステアリングのアシスト特性やVDC (ビークル・ダイナミクス・コントロール)の設定はNISMOと共用となっている。 【画像】ノート オーラ オーテック スポーツスペック。ボディカラーはオーテック専用色となる「オーロラフレアブルーパールとスーパーブラックの2トーン けれども「プレミアムスポーティコンパクト」をコンセプトとするこのクルマは、NISMOとは目指す方向性が大きく異なる。結果として使うアイテムもそこから先はまるで違う。タイヤはNISMOがミシュランの「パイロットスポーツ4」なのに対し、オーテック スポーツスペックはミシュランの「e-Primacy」を使用。ホイールサイズもNISMOのほうが0.5J幅広だ。 また、リアバンパー内側にある補強パーツはNISMOがバータイプなのに対し、オーテック スポーツスペックはYAMAHAのパフォーマンスダンパーをチョイスしている。さらにパワートレーンもまたVCM(ビークル・コントロール・モジュール)によりセッティングを変更。これはオーテック スポーツスペック専用となり、エコ、スタンダード、スポーツ全てがベースモデルとは異なる設定。もちろんNISMOとも違うそうだ。 AUTECHとしてお馴染みとなりつつある湘南の海をモチーフとしたエクステリアは、ガチガチのスポーツじゃなく明らかにプレミアムな世界観を狙っていると受け取れる。NISMOと共通しているのは大型のリアスポイラーくらいなもので、これは見た目だけじゃなく機能としても外せなかったのだろうと推測する。 専用スプリングを装着することで20mmの車高ダウンをしたこともあって、かなり安定感あるスタイルに仕上がっている。ちなみにスプリングレートはベースモデルに対してフロント約30%アップ、リア40%アップとなる。 ■ すべての領域でクルマとの対話がきちんと行なえる 試乗当日は走り始めた瞬間から豪雨に見舞われたが、そこでも安心して楽しめそうなところがまずは好感触だ。パワートレーンはどのモードを選択したとしてもアクセルにリニアな応答がありつつ、エコからスタンダード、スタンダードからスポーツに引き上げると程よく反応と伸び感が増してくるイメージ。とても操りやすい。 ロールとピッチを程よく収めた足まわりは、荷重移動が理解しやすく、その一方で動きすぎないという絶妙なサジ加減があり、路面状況のわるさが苦にならずに運転を楽しめてしまう。コントロール幅が広いこともまた好感触だ。 乗り心地がハードすぎないところも嬉しい仕上がり。すべての領域においてクルマとの対話がきちんと行なえる感覚がある。おかげで最終的には路面がわるいにも関わらず、電欠マークが出てしまうほどアクセルを踏んでしまった。それくらい悪条件であっても危うさを感じることなくドライビングに没頭できるということだろう。 これはNISMOじゃハードすぎるとか、もっと大人なクルマに乗りたいというユーザーにはかなりオススメな1台じゃないかと思えた。同じAURAであっても味付けの変更によって、これだけ方向性の違うクルマがあるのも面白い。ちょっと言い過ぎかもしれないが、BMWで言うところのMとアルピナみたいな立ち位置の違いが間違いなくそこにあった。
Car Watch,橋本洋平,Photo:高橋 学