「古性優作は異次元!」 誰にも再現できない“競輪の天才”/記者の記憶に残る一戦
コロナ禍の前は、我々も検車場に入れたから、こういうリアルな写真も撮れたが、それが難しくなっている。個人的にも、人間臭い競輪の魅力を伝える写真だと思うし、ファンの間でも評価が高かった。 その古性のアドバイスが功を奏して、寺崎は突っ張りに成功。ただ、思った以上に新山の巻き返しが早かった。その新山は叩けないとみるや、ワッキーの内に降りて併走。これも、過去の流れがあり、新山が青森記念の決勝などで、眞杉匠にやられているレースだ。やられているから、相手が嫌がる事を一番分かっている。
ここはワッキーが根性を見せて凌ぐが、次の矢の郡司浩平が、すかさず飛んできた。さすがに、これは対処できず、内に差してしまった。この時、古性は、アンコになったりしていて、普通なら飛んでいるケース。ここで脚を削られていない、古性の技術と脚力は天才的と言える。
その後は郡司の捲りに古性がスイッチ。記者席が3コーナーの上にあるので、真上から見ていて、脚を溜めていた佐々木悠葵の捲り一発が決まったと思った。
ただ、古性と郡司の2段ブロックで、大魚を逃してしまう。郡司の空いた内を古性が突き抜けたが、これはフロックではないだろう。自らに流れを引き寄せ、あり得ない様な脚力と、瞬時の判断は誰にも真似ができない。S級トップ選手の誰もが、「古性は異次元!」と口にする。 ワッキーの後ろは優勝に近い様で、実は最も遠い位置。古性にすれば、若手の番手で優勝、自力での優勝、ワッキーの番手で優勝と色々なパターンがあるが、理想はワッキーとのゴール前勝負のタイトル奪取だろう。これまで聞いた事がない「ダブルグランドスラム」は僕の競輪界の今年の流行語大賞だ!
現代競輪はダッシュ戦で単調なレースが多い。マーク選手が技術を発揮できない場だ。だけど、こうした泥仕合で、ビッグレースの決勝で全員が力を出し切るレースがあると、競輪界もあと30年は大丈夫だと確信できる。