森口博子はリストラ宣告をも乗り越え、なぜ約40年も活躍し続けられるのか
平成以降、お茶の間を常に賑わせてきた印象のある“仕事人”森口博子。持ち合わせるのは、その場を明るく盛り上げるエンタテインメント性だろう。一方で、シンガーとして揺るぎない歌唱力をもち、幅広いジャンルの曲を歌いこなしながら、現在では“アニソンの伝道師”としても活躍。長らく第一線を走り続けてきた印象だ。そんな彼女の仕事術を解き明かす。2回目。 【写真】ビキニ姿でSNSを沸かせた、森口博子
「毎回がプレゼン」楽しみながら、楽しませる。森口流エンタメ術
「仕事へは、毎回がプレゼンだと思って臨んでいます」 長らく第一線で活躍し続ける森口さん。このインタビュー中に起きた1時間程度のやりとりのなかでも、彼女のエンタテイメント性は溢れんばかり。「楽しいことが好き」と語るその言葉に嘘はない。 「このインタビューを含めて、どんな仕事でもそうですが、多くの歌手のなかから森口博子を選んでくださった。企業だったら採用されたということ。もしかすると私の代わりに選ばれたかった人が落選しているかもしれない。選ばれた喜びを噛みしめつつも、そういう緊張感をもっていたいんです」 ここまでも何度も記してきたオーディション落選の歴史が、森口博子をかたちづくる。振り返れば、一度は『水の星へ愛をこめて』で歌手デビューを果たすものの、その後ヒットに恵まれず、高校卒業直前には、事務所の組織図からその名が消えて、故郷の福岡に帰ることまでも提案されたという。これを、本人も「リストラ宣告」と呼び、捲土重来(けんどちょうらい)を期することとなったきっかけに位置付ける。 それを機に「どんなこともする」として、歌に繋がることを信じてバラエティ番組の仕事に挑戦。持ち前のエンタテインメント性を発揮しつつ得意の歌も披露しながら、いわゆる“バラドル”として活躍し、瞬く間にお茶の間の賑わいに欠かせない存在となっていった。 「とにかく楽しいことが好き。歌手もタレントもチャンネルをわけるということはありません。ただ、役割が違うとは感じています。バラエティは、多くの演者の方々とのキャッチボールで成立していますので、どう盛り上げていくかを客観的に見ながらのチームプレイ。歌の世界は、パーソナルな要素が大きいです。自分が伝えたいメッセージをスタッフの皆さんやバンドメンバーと磨き上げていく。自由度が高いと感じるのは歌ですね」 さらに言えば、森口さんが考えるエンタテインメントが凝縮しているのが、コンサートだ。とにかくオーディエンスを楽しませる。 影アナ(場内アナウンス)の段階から本人が登場することも! 影アナのウグイス嬢になりすますボケをかましつつ、ステージではお約束のキャッチボールでくすぐっていく。 「靴の紐を結ぶフリしてしゃがむんです。一番前のお客さんに“今、パンツ見えた?”って。“見たでしょ?”と詰める。お客さんは“見てない”と真っ向否定。“見たでしょ”“見てない”の応酬のあと、“いや、見なさいよ!”って(笑)。安住紳一郎アナからも“古典芸能”って呼ばれるんですが、こういうやり取りが楽しいんです(笑)」 グッズとコンサートの連携も魅力のひとつ。企画立案から森口さんが参画し、意思決定を進めていくのだ。「頻繁にサプライズも仕込みます」と、ここでは書けないさまざまな仕掛けが今回のツアーでも盛り込まれているという。みんなで作り上げる一体感が感じられ、その雰囲気にオーディエンスたちも心掴まれるのだろう。 「コンサートは自由なもの。最終的には、みなさんの生きる力につながる音楽をお届けしたい。譲れない居場所です。それがあるからコンサートはやめられません」