ボクシング東京五輪代表”内紛火種”が新型コロナ余波のオンライン講座で解消?!
しかも、これまで代表合宿に入れば、個人的なペースでの練習は一切許されず、普段の練習とのギャップに戸惑う選手も少なくなかった。 成松は、元ウェルター級の全日本王者で世界選手権出場経験もあり、東農大では主将も務めた平野義幸コーチ(37)と自衛隊体育学校ではタッグを組んで練習をしているが、代表合宿では、練習の中身が一変するため困惑していたという。 だが、東京五輪に向けて、やるべきことをすべてやってメダルを狙いたい、というのが選手の本音である。言われたままやって負けても誰も責任は取ってくれない。 これらの不満を持ったまま、今後、シン・コーチの練習指導に従っていれば、チーム”内紛火種”になりかねない。ボクシングは個人競技だが、五輪代表、代表候補となれば、ナショナルトレーニングセンターや、海外合宿など、チームとして全員が同じメニューに取り組む機会と時間が多い。全員でレベルアップしていくという側面もある。日本連盟は、今回、初めて男女の代表に「阿修羅ジャパン」「ブルーローズジャパン」と愛称をつけたが、そこにはチームが一丸となってメダル獲得へ向かっていこうとの狙いもあった。だが、その肝心の全体練習を指揮するシン・コーチとの信頼が薄れれば、最悪チーム崩壊を招く危険性もある。おそらく男女の代表メンバー最年長で、リーダー役でもある成松は、責任感を持って切実なアスリートの声を挙げたのだろう。 成松の訴えを受けてシン・コーチは、前向きに返答した。 「個人練習がベースとなるが、全体練習には全体の目標がある。コーチからも練習の方法について相談があった。話し合っていこう」 今後、選手の声に耳を傾けることを約束した。個人練習の許可も含めた練習スタイルを見直す方向性を示した。”内紛の火種”が、解消に向かったと見ていいだろう。 成松も、燻っていた問題が解決されたことに胸をなでおろした様子だった。 「シン・コーチは、自分たちのことを家族のように思って接してくれているんだと改めて思いました。今後、シン・コーチと選手又は担当コーチの間で少なからず意見の衝突はあるとは思いますが、これもお互いを理解し全体のレベルを上げていくには必要な過程だと思うので、自分の考えをしっかりと伝えていきたいと思います。シン・コーチの考えと選手それぞれの考えがうまく組み合わさり、良いバランスを取ることができれば、自分は、もちろん、全体のレベルは上がっていくと確信しました。今日は有意義な時間を過ごせました」 成松の言葉通り、新型コロナ禍で閉塞感が漂う時間を「不協和音の解消」という有意義な時間に変えられたのは、メダル獲得へ向けて日本連盟が企画したオンライン講座のヒットだろう。また選手が指導者のトップに本音をぶつけることができたのも、山根体制が崩壊後、日本連盟が開かれた組織になっていることの象徴なのかもしれない。