ボクシング東京五輪代表”内紛火種”が新型コロナ余波のオンライン講座で解消?!
新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて活動がストップしている日本ボクシング連盟は19日、1年延期された東京五輪代表、代表候補選手のモチベーション維持と強化のための第2回オンライン講座を日本代表コーチのウラジミール・シン氏(66、ウズベキスタン)を講師に迎えて行った。実は、代表チームの一部からは、シン・コーチの指導方針に対する不満の声があり、”内紛火種”が燻っていたが、質問コーナーで、2大会連続の五輪出場を決めているライト級の成松大介(30、自衛隊体育学校)が思い切って直訴。シン・コーチも、前向きに今後の練習スタイルを見直していくことを約束した。”ドン”山根明会長が退任して、一新された連盟の新体制は、開かれた健全なガバナンスを目指しているが、メダル獲得へ向けて、チーム内の不協和音を消す、有意義な時間を作れたようだ。
選手の間で燻っていた練習スタイルへの不満
新型コロナ禍による閉塞感を打開しようと五輪代表及び代表候補選手へのオンライン講座を始めた日本ボクシング連盟。大好評だった前日のロンドン五輪ミドル級金メダリストで現WBA世界ミドル級王者、村田諒太(34、帝拳)に続き、第2回目の講座には、男女代表チームの指揮を執るシン・コーチを講師に招いた。 シン・コーチは、この日、一人一人の選手に、今後、伸ばしていく長所、課題を指摘し、具体的な1週間の練習メニューを伝えた。 質疑のコーナーとなり、本音で練習方法の見直しを直訴したのが2大会連続の五輪出場となるライト級のベテランの成松だった。 アジア・オセアニア予選では初戦で敗れ、自力での五輪切符奪取とならなかったが、2018年のアジア大会で銅メダル、2019年の世界選手権ベスト16の実績を評価され、開催枠でライト級の東京五輪代表に選ばれたボクサーである。 「私は、選手キャリアの中で、自分で考えたり、平野(義幸)コーチと話し合いながら、自分の練習メニューを決めてきた。今後、合宿等で全体練習があるが、その後などで個人の練習も取り入れたい」 全体練習はシン・コーチの指示通りに行うが、その他の時間を利用して個人練習をしたいと直訴したのである。 シン・コーチは、旧ソ連時代に世界選手権のライトミドル級でメダルを獲得、引退後は、ウズベキスタンで指導者として手腕を発揮し、リオ五輪ではウズベキスタン連盟の専務理事兼強化委員長として、3つの金メダルを含む出場国最多の7個のメダルをもたらした祖国のボクシング界では、英雄的人物。日本連盟は、その指導力もさることながら、国際ネットワークの”顔”の広さを評価して昨年から男女の専任コーチとして契約を結んだ。 実際、シン・コーチの人脈で海外合宿などが実現した。 だが、その練習方法を巡っては、選手の中からは、少ならからず不満の声があった。「ダメージを残してはならない」との考え方から、スパーリング形式の実戦練習量が少なく、また「試合で体力を失うから」と、試合前のアップの時間も極端に短く、エンジンがかからないまま、消化不良の3ラウンドを終えてしまう選手もいるなど、そのウズベキスタンスタイルにフィットしない選手もいた。