【昭和レトロな腕時計、ポストヴィンテージの名作に浸る】パテック フィリップの“プチコンプリケーション”
高級時計の最高峰として時計愛好家から不動の評価を獲得しているパテック フィリップ。現行はもちろん、とりわけ人気を集めているのが1960年代以前のアンティークだが、ポストヴィンテージ時代にも良作は多い。作りや設計はアンティーク黄金期のモデルに比べるとやや簡素化されているが、実用性が高く、なおかつ現行モデルにはない手作業の質感や作り込みを残しているのが魅力だ。 【画像】メカニカルな文字盤とホワイトゴールドケースをもっと見る アンティークとポストヴィンテージ時代のモデルで、最も異なるのがムーヴメントだろう。パテック フィリップが60年代まで採用していたのは自動巻きのCal.27-46-0だった。精度が高く耐久性に優れた機械であったが、Cal.27-46-0は、手巻きムーヴメントの上に自動巻き機構を重ねる構成であったため、厚みがあり、センターセコンド化が難しいという弱点を抱えていた。その点を克服したのが、77年代に登場する240系のムーヴメントである。
一般的に、自動巻きムーヴメントを薄型化するためにはパーツの厚みを抑える必要がある。そのため耐久性が下がることが多いのだが、240系はローターのサイズを最小化したマイクロローターを採用。地板の内部にローターを統合させたことで、剛性を維持しつつ厚さ2.53㎜という薄型設計を実現。パテック フィリップは、この省スペース設計を生かし、240系を複雑機構モデルのプラットフォームに採用していった。 今回紹介するプチコンプリケーションもそのひとつだ。現在のパテック フィリップでオフセンターデザインといえばノーチラスの5712だが、当時のノーチラスは2針、3針がベース。このプチコンプリケーションは、現在まで継承されるオフセンターデザインの原点的モデルといえるだろう。 プチコンプリケーションはクラシックな意匠を採用した5054、ブレスレットを備えた5085、そして5055と三つのレファレンスが展開されたが、5055はエッジを立たせたモダンなケースにゴシックフォントのインデックスを配した文字盤を採用しているのが特徴。当時のパテック フィリップのなかでも異色のスタイルを備えたモデルであり、生産終了から約20年を経たいまもマニアの間で根強い人気を集めている。細かいディテールは画像ページを参照していただきたい。
文◎Watch LIFE NEWS編集部