教化・忠実・訓練、ウクライナと戦う北朝鮮兵を過小評価すべきでない理由
ソウル/香港(CNN) 世界で特に孤立し秘密主義的な国家である北朝鮮の兵士は祖国から遠く離れ、第2次世界大戦以降で欧州最大の紛争の中心にいる。北朝鮮兵の数は約1万1000人にのぼる。 【映像】北朝鮮兵の合流に不平漏らすロシア兵、ウクライナ軍が通信傍受 ウクライナとの数年に及ぶ戦争でロシアを支援するために派遣された北朝鮮兵について、あるいは北朝鮮兵が具体的に何を命じられるのかについても、ほとんど知られていない。北朝鮮兵の存在はロシア政府や北朝鮮政府から公式に認められてもいない。 米国、ウクライナ、韓国の諜報(ちょうほう)機関によると、北朝鮮の兵士はすでに戦闘作戦に参加しており、数万人のロシア軍と合流してロシア西部クルスク州にあるウクライナ軍の陣地を攻撃している。これらの部隊が今後どのように展開するかについては臆測が飛び交っている。 米高官は17日、10月に数千人の部隊をロシアに派遣して以降、北朝鮮はクルスク州で「数百人」の死傷者を出したと述べた。 ウクライナによると、同国国境に近いクルスクの村付近で週末だけで少なくとも30人の北朝鮮兵が戦闘で死傷した。ウクライナの部隊は、北朝鮮兵が「70年前と同じ戦術」を使って歩兵攻撃を仕掛けたと報告した。歩兵による人海戦術が使われた朝鮮戦争に言及したものとみられる。 北朝鮮兵は実戦経験がなく、残忍な現代の戦争下で不慣れな地形に直面することになる。 米当局者は「装備について考えずに彼らの能力をより広範に説明するとしたら、彼らは百戦錬磨ではなく、これまで戦闘に参加したことがない兵士だと言う」と述べた。また、死傷者には指揮統制系統の統率者を含む「すべての階級」が含まれると評価しているという。 一方で、一部のアナリストは北朝鮮兵を過小評価しないよう警告している。 韓国の退役中将である全仁釩(チョンインボム)氏によると、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)総書記は高度に訓練され「教化された」精鋭部隊「暴風軍団」から「最高の」兵士を派遣するという。 同氏によると、派遣される兵士の一部は米海軍特殊部隊(SEAL)などのような特殊部隊所属で、その他は軽歩兵や狙撃兵だ。 北朝鮮の第11軍団である暴風軍団は「平均的な北朝鮮兵よりもよく訓練され、体格がよく、士気が高い」という。 米ワシントンのシンクタンク、スティムソンセンターの北朝鮮分析サイト「38ノース」の非常勤研究員マイケル・マッデン氏は、ベトナム戦争以降最大規模で派遣される北朝鮮兵には戦闘に耐え抜くための「特定の心理的トリック」が備わっていると話す。 同氏は「彼らはプログラムされており、教化されている」と述べ、問題はその程度だと指摘。「彼らはおそらく心の準備という点では北朝鮮の他の兵士や外国の紛争に参加する他の兵士よりも恵まれている」 しかし、北朝鮮兵が直面する最悪の困難を克服するには、精神的な強さだけでは十分ではないかもしれない。 ドローン(無人機)戦争はウクライナの戦場を一変させ、軍事目標だけでなく民間人や公共インフラに対する監視と破壊を新たなレベルに引き上げた。 韓国の議員は、指揮や通信の問題が報告される中、ロシアは北朝鮮兵に「射撃」や「配置」といった約100個の基本的な軍事用語を教えていると述べている。 ロシアでの訓練には砲撃、無人航空機の操縦、塹壕(ざんごう)での戦闘を含む基本的な歩兵作戦などが含まれているという。米国務省は「これらは前線での活動に不可欠なスキル」としている。 また諜報機関による評価では、北朝鮮兵がロシア軍に組み込まれていることが示唆されている。 国務省は、ロシアが北朝鮮兵をうまく活用できるかどうかについて「自軍にどれだけうまく北朝鮮軍を統合できるかに大きく左右される」と述べた。