「生きることを後押ししたい」「SFを集めた」独立系書店が続々誕生 街の本屋を守る店主の個性が光る
長野県の松本地域で独自に選書をして新書や古書を扱う「独立系書店」が増えている。家や職場以外の「第3の居場所」として夜まで店を開いたり、ある分野の書籍を多く販売したりと個性豊か。出版不況の中、一般の書店が減る一方、小さくても独自の工夫を凝らす書店が全国的に増加傾向にあるといわれている。 【写真】図書館も多様に。老舗店舗を引き継ぎ大学生が開業
■閑静な住宅街で夜8時まで営業 カフェも
安曇野市豊科南穂高の閑静な住宅街。7月、横浜市出身の中村良太さん(42)が書店「GreenBenchBooks」をオープンした。40平方メートルの店内には料理や旅行などに関する新刊400冊が並び、「社会で生きていくのにちょっと後押ししてくれる本を選んだ」という。
「間口が広く、何かしらの偶然の出合いがある」書店が好きだと話す中村さん。妻との移住をきっかけに4年前に本の移動販売を始めた。職場や自宅でなく過ごせる第3の居場所を提供したい―と店舗を持つことにした。木、土曜日は午後8時まで営業し、さまざまな話ができるカフェとしても開く。出版不況でも「いかに本を届けられるかを考え、やりがいを感じている」と話している。
■SFが好きで国内外のフィクションだけ取り扱い
全国チェーンの書店で勤務経験のある月元健伍さん(39)は、年内にも松本市女鳥羽に「ブックスエコーロケーション」を開くため準備を進めている。日常と距離を置いて未来を予測するSFが好きで、国内外のフィクションを集めた場をつくりたいと決意。古本も含めて2千冊を取り扱う予定だ。
2017年に松本市城東に書店「books電線の鳥」を開いた原山聡矢さん(63)によると、20年以降、松本地域で移動販売も含め6店舗以上の書店が開店したという。松本市街地で「本屋を歩いて回る旅行者が増えてきた体感がある」とする。書店店員時代から読書会を開いてきた月元さん。「表現の制約がない小説の良さを知ってほしい」と本の魅力も伝える方針だ。