ドラゴンズの"課長"松葉貴大投手「完投しま~す!」宣言に込められた思い
「とある妄想しがちなファンのドラゴンズ見聞録」 CBCテレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜日午後12時54分から東海エリアで生放送)を見たコラム 【動画】田中幹也がバックトス!華麗なダブルプレーがこちら【0分23秒~】 4月29日のベイスターズ戦、ドラゴンズファンだけが感じる驚きがあった。その驚きを生み出したのは、"松葉課長"という異名を持つ松葉貴大投手だ。しっかり任せられた仕事をやり切る姿勢や、5回というプロ野球における定時のような先発投手の責任投球回で役割を終える様からそう呼ばれていた。逆に言えば安定している分、想定外の活躍を過剰に期待されることは少なかったかもしれない。それを良い意味で大きく裏切られるような完投劇であった。一般のファンにとっては少し身近な"課長"という存在で近く感じていたからこそ、鮮やかな感動があった。今週のサンドラでは、松葉投手の完投劇とそれに至るまでの本音に迫ります。
「もう一度先発で…」柳投手の言葉をきっかけに意識し始めた完投
まずは松葉投手の経歴を辿る。東洋大姫路高校時代には左肘の故障で一旦投手を諦めたが、大阪体育大学時代に打撃投手を務めた時のピッチングが評価され見事に投手としての復帰を果たす。2012年、バファローズにドラフト1位で指名され、2019年にはドラゴンズにトレードで移籍という紆余曲折のある野球人生を送っている。 ストレート、ツーシーム、カットボール、チェンジアップ、スライダー、カーブ、スプリットの7球種を操る技巧派のピッチングが挙げられ、清水達也投手からの情報によれば、『指先億越えプレイヤー』と自ら名乗っているとのこと(推定年俸5000万円)。 選手名鑑の顔写真は、12球団1の笑顔と称されている。その理由は、プロ野球人生のゴールが見えているから色々と面白いことをやりたいと思った結果だそうだ。本当にとびきりの笑顔を残しているので、是非とも選手名鑑をチェックして目に焼き付けて欲しい。 2023年の夏、ドラゴンズの先発陣が不調に喘ぎ、次々と降板してしまう試合が続いた時期があった。先発陣が集まった席で、チームを引っ張る存在の柳裕也投手が『もう一度、先発投手でチームを支えていきましょう!』と鼓舞した。松葉投手は5回までの登板という制限に歯痒さや悔しさもあり、それをきっかけに『完投したい…!』という意識は芽生えていた。 今年の沖縄キャンプの休養日に行われたバーベキューで、祖父江大輔投手に促されるかたちで冗談のように言い放った『完投しま~す!!』という目標。5回までの登板が定時でしっかり仕事を終わらせる会社員のようで、"松葉課長"というあだ名をつけられたことから、それを受けたリップサービスとも受け取れる発言だったが、本当のところは笑いを誘ったわけではなく素直に完投したいという気持ちを言葉にしたそうだ。実際、それを聞いた選手たちは『頼むぞ頼むぞ!』と鼓舞してくれていたと語った。ひょうひょうとした松葉投手らしい意思表示だったのかもしれない。 そんな目標を持って挑んだ今シーズン、初登板は4月上旬のベイスターズ戦で見事初勝利を収めた。その翌登板となった甲子園球場でのタイガース戦では、序盤から雨に見舞われた厳しい環境の中で5回まで無失点、6回にスリーランを浴びながらもくらいついていた。しかし、7回表のドラゴンズの攻撃が終わった後、降雨コールドが宣告され試合終了。8年ぶり2度目の完投は無念の記録となった。その時の気持ちについて松葉投手はこう語った。 松葉投手「記者の方からも、『完投という形になりましたけど、どうですか?』と聞かれたんですけど、自分が思っている完投というのはやはり9回を投げ切ることが完投だと思っているので、あの時本当に完投したという実感はなかったですね」 コールドにより9回を全うできなかったのは確かだが、かけられる期待や託されている責任が着実に以前より大きくなっていて、松葉投手自身もそれを強く感じていることが見えた試合ではあった。