「怪盗グルー」と『インサイド・ヘッド2』の2強対決に思わぬ刺客が!?高評価のオカルトホラー『Longlegs』とは
先週末(7月12日から7月14日)の北米興収ランキングも、前週につづいて『怪盗グルーのミニオン超変身』(日本公開中)と『インサイド・ヘッド2』(8月1日日本公開)がほかを突き放す一騎打ちが続くと思われていたが、予想外のタイトルが2強の間に割って入るという番狂せが起きた。まずはこの、2位にランクインした『Longlegs』という作品についてチェックしていこう。 【写真を見る】ニコラス・ケイジがシリアルキラーに!誕生日をねらう“ロングレッグス”とは何者だ 『イット・フォローズ』(14)のマイカ・モンローと、言わずと知れたスター俳優ニコラス・ケイジが共演した同作は、1990年代を舞台に不可解な連続殺人事件の捜査にあたるFBI捜査官を描いたオカルトスリラー。メガホンをとったのは『呪われし家に咲く一輪の花』(16)などを手掛けたオズ・パーキンス監督で、制作費は1000万ドルにも満たない低予算作品である。 それが初日から3日間で興収2240万ドルと、2024年公開のホラー映画としては最高のオープニング成績を記録。また、『パラサイト 半地下の家族』(19)など賞レースに絡む良作を次々と輩出してきた配給会社NEONのオープニング新記録も樹立している。このヒットの一助となったのは、デジタルに特化した画期的なプロモーションだといわれている。 タイトルを出さないティザートレーラーや、あらゆるホラー映画の上映劇場で予告編を流したり、暗号付きの広告から劇中に登場するシリアルキラーのウェブサイトに誘導したりなどなど。バイラルマーケティングの先駆けとしてかつて大成功を収めた『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(98)を参考にした一連の宣伝活動が奏功し、このヒットスタートに結びついたようだ。 ちなみにこの宣伝費用も1000万ドル未満。初動3日間でもう完全な黒字収支が確定したということだ。そしてなにより、批評集積サイト「ロッテン・トマト」によれば批評家からの好意的評価の割合は86%とジャンル映画らしからぬ高さを維持。観客からの好意的評価の割合が65%とやや伸び悩み気味なのは、宣伝効果で多様な客層に届いた証左とも捉えることができる。いずれにせよ、こうしたインディペンデント作品も存在感を示すあたり、やっと北米のサマーシーズンらしくなってきた。 とはいえこの予想外の刺客が出現しても、『怪盗グルーのミニオン超変身』はそう簡単に主役の座を譲らない。前週比58.1%となる3日間興収4359万ドルを記録し2週連続でナンバーワンに立った同作は、週末段階で北米累計興収2億1000万ドルに到達。 このペースは、「怪盗グルー」フランチャイズの現時点での最高成績である興収3億7000万ドルを記録した『ミニオンズ フィーバー』(22)とほぼ同等。先日「ミニオンズ」シリーズの第3弾の製作が正式に決定したことも、集客への大きな後押しになっていることだろう。 一方、僅差で『Longlegs』に敗れ3位となった『インサイド・ヘッド2』だが、こちらも5週目ながら週末3日間で興収1996万ドルと勢いの低下はみられない。週末段階での累計興収は5億7000万ドルを突破し、16日の火曜日には『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(23)を抜き去り北米におけるアニメ映画の歴代2位まで浮上している。 さらに全世界興収では、その『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』を抜き去って13億8919万ドルまで到達。実写もアニメもすべて含めた全世界歴代興収ランキングでは16位まで浮上しており、昨年の最大のヒット作である『バービー』(23)の14億4563万ドル、現時点のアニメ歴代ナンバーワン作『アナと雪の女王2』(19)の14億5368万ドル、『トップガン マーヴェリック』(22)の14億9569万ドルも射程圏内。アニメ映画初の全世界15億ドル到達もいよいよ現実味を帯びてきた。 文/久保田 和馬